本研究は都市政策の比較を切り口とし、広島県内の西(広島)高・東(福山)低の実情を把握する中で、福山市の都市政策の方向性について考察することを目的とし、以下の3項目について検討・考察を進めた。
 

(1)広島県の都市政策分析(西高東低の現状把握)からみた将来像の考察
 

○駅周辺開発に着目したところ、いずれも官民連携による事業化に取り組んでいるが、福山駅周辺再生事業では集積機能や規制誘導等整備手法の検討に弱さがあると考察。

(2)福山市の現状分析(ポテンシャル分析)からみた将来像の考察

○福山市は中国地方で最も転出超過数が多い都市であり、外国人の流出入が影響している一方、人口減少社会では関係人口増で定着人口増に繋げる政策が必要であると考察。

○自治体財政の健全度を示す指標の1つである将来負担比率に着目すると、福山市は0%を維持しており、財政調整基金が約200億円(2018年度)と健全な運営状況が伺えた。

(3)福山市をとりまく新たな社会経済情勢の変化からみた将来像の考察

○コロナ禍で経営が厳しい飲食業・宿泊業に対しては、休業補償や個人消費による維持方策ではなく、企業・事業所による消費行動や柔軟に使える市費の運用に工夫が必要。

○また福山市の新たな産業として期待される観光業については、民間人登用などにより行政内マネジメント手法を変え、歴史を活かした観光地づくりに取り組むべきと考察。

○人口減少対策の一環として打ち出している子ども科学館構想については、デジタル化時代こそ自然科学の学びを重視し、島嶼部・中山間部での分散型子ども科学館を提案。

以上の検討概要を、雑誌「経済リポート」に定期連載して検討成果を公表してきた。

(研究課題・研究理由等)
【 研究課題(テーマ)】
各種統計データによる福山市の現況・将来の可視化


【 研究理由・目的・検討項目 】


都市政策の有効性を示す根拠(エビデンス)として、様々な統計データによる現況・将来の可視化が不可欠になってきている。とりわけ新たな政策提案に際しては「起きている変化」を各種統計データなどにより客観的・定量的に示し、これを踏まえた政策効果を示していくことが重要である。本研究では、福山市に係る都市政策提案に資する各種統計データを用いたエビデンス作成(可視化)に取り組むことを目的とする。


具体的には、福山市への政策提案に向けた諸作業として、以下の項目の作業を進める。


(1)福山市において「起きている変化」の可視化


 福山市では、人口減少(若者の人口流出)やものづくり産業における担い手不足などの課題が指摘される一方、観光業・対事業所サービス業などの育成が求められてきている。そのため、こうした「起きている変化」について各種統計データを活用することにより、現状の可視化を試みる。


(2)福山市における「これまでの取り組み」の可視化


福山市では、総合計画や産業・観光・農業などの各種振興計画など、様々な政策・計画において、その根拠(エビデンス)となる各種統計データの整理が進められてきている。そのため、行政計画等に記載されているエビデンスを整理・分析しつつ、取組提案されている各種政策との関連性について、考察する。


(3)福山市における「今後の取り組み」の可視化


人口減少・少子高齢化が進行し、とりわけ島嶼部や中山間地域などの生活条件不利地域における持続可能な都市経営が強く求められる状況に至ることが想定される。また、中心市街地の活性化や、郊外部に開発された住宅市街地の維持など、福山市をとりまく政策課題は多く存する。そのため、福山市を引き続き「住みたい・済み続けたい都市」として選んでもらえるよう、的確な政策提案が強く求められてきているが、その提案根拠(エビデンス)について、各種統計データ等を用いて可視化に取り組む。


 【研究の取り組み方 】


本研究では、上記の研究理由・目的・検討項目について、福山市の政策資料や各種統計データを用いて可視化していく。
【可視化に向けた作業方針】
・福山市における政策資料での根拠(エビデンス)の収集・検証
・地域経済分析システム(RESAS)等を用いた各種統計データの収集・整理・考察 など