■ しかることも、褒めることもしない

 横田さんが目指したのは、社員が自発的に気づき、考え、行動し、反省し、改善していく組織。頭ごなしに指示命令はせず、「委ねる」ことを大切にしています。人は、指示されると言うことを聞くだけのロボットになってしまう。横田さんはそれを危惧しているのです。

 横田さんは部下をしかりません。そして、褒めることもあまりないそうです。しからないというのはさておき、褒めるのは別にいいんじゃないの? と思われるかもしれません。でも、そこにも彼なりの哲学があるのです。

 「褒められてうれしい、というのは、外発的な刺激から来ているものですよね。褒められたいと思って仕事をする人は、外からの動機づけに頼っていることになります。それでは内発的なエネルギーが生まれません。自分の内側から湧き上がるモチベーションが必要なのです。褒めるのは二流。褒めない、しからないというのが一流のマネジメントだと思います」(横田さん)。

 さて、ここからは、女性の働き方について聞いてみたいと思います。「結婚、出産といったライフイベントを迎えても、女性が辞めずに活躍し続ける組織が理想的」ということは、多くの経営者が頭ではわかっていること。でも、それを実践できている組織はほとんどありません。多くの組織で女性社員が辞めてしまうのはなぜなのでしょう? 

■ 女性のよさがにじみ出てくる経営とは

 「それは、組織が女性営業社員を幸せにすることを第一に考えているのか、とにかく商品を売らせることを第一に考えているのか、その違いでしょう。おそらく、ほとんどの組織は後者だと思います。商品をたくさん売ることだけを考えていると、競争が過熱して、結果的に社員に負担がかかってしまいます。社員の幸せを第一に考えることで、楽しく自発的に動く仕組みが作れるのです。

 当社は(トヨタグループの中で)顧客満足度ナンバーワンを12年連続でいただいております。でも、あくまでも従業員満足(ES)があって顧客満足(CS)がある。社員たちにとって何が幸せなのかと聞いたら『お客様が喜ぶ顔がうれしい』『お客様が幸せなのが自分の喜び』と言います。自分が満足のいく仕事ができるからこそ、結果的に顧客に満足していただけるのです。その順番を間違えてはいけません」(横田さん)。

 ネッツトヨタ南国では、女性社員がどういう形で活躍しているのでしょうか。横田さんは「女性は気遣いの宝庫」だと言います。

 女性には女性のよさがあり、それが自然ににじみ出てくるのが理想。将来的には、ひとりのお客様に対して女性と男性の両方が接客をして、お互いのいい部分を提供できるような仕組みを作りたいと考えているそうです。確かに、女性ならではの気遣いを仕事に生かすことができれば、顧客も会社に対して親しみを感じてくれるかもしれません。


「女性には、一般的な『牽引型のリーダー』は似合わないと思います。牽引型のリーダーには、図太さと孤独に耐える力が必要です。でも、当社におけるリーダーは、部下に仕事を任せたり、部下が困っているのを助けたりして、信頼関係を築いていきます。このタイプのリーダーであれば、女性にも適性があると思います。女性にリーダーを目指してほしいのであれば、一般的な形とは違うものとして、新しい形のリーダー像を提示することが大事です」


 「上下関係があまりないことだと思います。先輩に相談したいことが何かあっても『まずは自分で考えなさい』と言われて、自分で考え、先輩にもその考えをしっかり聞いてもらえます。だからこそ、どうすればいいか自主的に考えて、自発的に動けるようになるのです」


「女性が出産・育児と仕事をうまく両立するためには、職場と同僚の理解が必要です。妊娠で具合が悪いときや、幼い子供が病気のときなどに、遠慮なく休みを取れるような雰囲気を作らなくてはいけません。会社のトップがそのような考え方を持っていれば、それが全社に浸透していくことになると思います。

 そして、職場の理解だけでなく、共に仕事をしている同僚の協力も欠かせません。女性が産休を取ったとき、同僚はその分だけ仕事をカバーしてあげなくてはいけません。そこで『こういうことは順番だから』と、嫌な顔をせずに進んで協力することが大切です。

 そのような待遇を受けた女性は、自分が復帰したら自然に後輩を助けたりできるようになるはずです。そうやってお互いに協力し合える組織を作っていけばいいのです。一方的に甘えるばかりではいけません」