消費税法案の採決にあたっての有志声明

私たちは政局や権力闘争と一線を画し、政策本位で消費税論議に関わってきた有志の衆議院議員です。私たちは、今回の民主・自民・公明3党合意と、それに基づく消費税法案に大きな問題があると考えており、残念ながら賛成することができません。
 理由を以下に述べます。

第一に、社会保障が置き去りにされているためです。3党合意で、後期高齢者医療制度の廃止、最低保障年金の創設、年金の一元化などの議論が先送りされ、幼保一体化、低年金者対策なども中途半端な改善策に置き換えられました。これでは「社会保障と税の一体改革」といえません。

第二に、高額所得者に負担を求める部分が削除され、格差是正の理念が失われているためです。超富裕層の所得税率アップ、相続税拡大、年収2000万円以上の高齢者に税金で支払っている年金の減額などは棚上げされました。低所得者に負担が大きい消費増税を先行させたら、むしろ格差が拡大してしまいます。

第三に、増税による景気の押し下げと、それに伴う税収減を危惧するためです。デフレや震災で戦後最悪の状況にある日本経済が、さらに低迷する恐れがあります。「景気条項」が不十分である上、3党合意で財政改善を口実にした公共事業推進が盛り込まれ、「不況下で増税を強行し、税収を景気対策と称して公共事業につぎ込む」ことすら懸念されます。

第四に、党内手続きに不備があり、党議が成立したとは考えられないためです。政調合同会議や両院議員懇談会では一方的に「一任」が宣言され、「大多数の拍手による了承」という通常の手続きすらありませんでした。議員1/3の署名による両院議員総会の開催要求を無視したことは明らかな党規違反で、党議拘束は無効と言わざるを得ません。

第五に、増税の前提である行政改革、政治改革が不十分であるためです。競り下げ入札による調達改革や独法・公益法人改革等を盛り込んだ「行革実行法案」、議員定数を削減する「選挙制度改革法案」などは、ほとんど審議されていません。ねじれ国会に伴う困難は理解しますが、政府・党首脳の熱意の大半が増税に傾けられ、行革や政治改革がなおざりにされているよう感じられてなりません。

以上、今法案の問題点は明らかです。私たちがかつて衆議院本会議の首班指名で「野田佳彦」議員に一票を投じ、その総理が政治生命をかけて増税に取り組んでいる現実を考慮してなお、採決で賛成することは困難と言わざるを得ません。
私たちは今回の採決で賛成票を投じることはできません。各議員がそれぞれの判断で、棄権または反対の行動を取ります。
 私たちの行動はあくまで政策・理念に基づくもので、政局的な思惑は一切ありません。また、各議員が処分を受ける覚悟を持ちつつも、民主党の理念を掲げて活動してきたことに誇りを持ち、この問題でみずから離党する意思のないことを申し添えます。民主党が分裂することなく、再び全党一丸となれる状況を作るよう、努力して参ります。
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