国際政治学者で、大学時代の同級生の三浦瑠麗さんとの対談「令和の子育てと教育」を、村井ひでき通信第32号の裏面にまとめさせて頂きました。

 そこに収まりきらなかったやりとりを、以下、掲載させて頂きますので、もしよかったらご覧下さい。

 

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デジタル化時代の初等中等教育の方向性

 

-  詰込み教育から考える教育へ -

村井:小中学校の教育政策の方向性について議論したいと思います。三浦さんは、今後の教育に必要なことは何だと思いますか。

三浦:最近、N高というネットを活用した通信制の高校で、高校生に教えています。そこで確信したのは、早い段階から、考える教育をしなければならないということです。
  これまでは、詰め込み教育が重視されてきました。とにかく細かい知識を覚えさせる。私は理系だったけど、細かい知識はほとんど抜けてしまいました。
今までは、特に目立たないが、悪くもないといったことが目指されてきたのではないでしょうか。しかし、これからは、より積極的に個人を捉えていくことが必要だと思います。
最低限、ベーシックな暗記は必要ですが、その上に総合判断能力と自己表現力を身に着けさえすれば、あとはいかようにもなると思います。そのためにも、考える教育を中学校から本格的にやった方が良いですし、自分自身を表現できる語彙力を高めていく必要があります。
その際、オンライン教育の活用が大事だと思います。N高では、Zoom(ズーム)を使うことで、全国各地の高校生に授業ができています。地方でも、都会と同じ質の授業を受けられるオンライン教育には凄い可能性があると思います。

村井:おっしゃるように、詰め込み教育から、自分の頭で考える教育への転換は今後ますます重要になりますね。その際、デジタルの力は不可欠ですね。自分の頭で考える教育は、これまで以上に教える側も難しい。その点、デジタルを活用することで、例えば、ベストティーチャーの授業を幅広い生徒が受けられるようになります。
  また、デジタルを活用することでより効率的な授業ができます。例えば、AIドリルという仕組みを使えば、覚えるべきものや反復が必要な学びを短期間で済ますことが可能です。
その上で、効率化した時間を使って、学校の外とつながる教育を充実したいです。例えば、答えのない課題に自分で考えてみる。グループで協力したり、身近な大人から知恵を聞いても良い。試行錯誤しながら、仲間と協力して、答えのない課題に答えを出すようにする。こういう能力こそ、これからの社会で必要とされるものではないかと思います。

-デジタル化が拓く教育の未来 -

三浦:政府としても、オンライン教育や教育のデジタル化をもっと進められませんか。

村井:政府としても、「GIGAスクール構想」を掲げて、全国の公立小中学校で生徒1人に1台のPCを配布するとともに、AIドリルやデジタル教科書の活用などを進めています。まずは、これでハードは整ったということだと思いますが、今後は、せっかくのPCを現場の課題解決に使っていかないといけないと考えています。
例えば、公立小中学校の現在の最大の課題は、先生方の、平日1日あたり、小学校で11時間45分、中学校で11時間52分の勤務時間・持ち帰り業務時間です。こうしたこともデジタルを適切に利用すれば、保護者との情報共有や報告書の作成などの校務も効率化され、生徒達への指導により時間がさけるようになります。
また、デジタル化がもう一歩進めば、生徒たちのデータを活用して、個々の生徒の進捗や得手不得手に応じた個別最適な教育も将来的には可能です。それにより誰一人も取り残すことのない学びに近づきます。

- 子育て世代の代表として -

三浦:35人学級も始まりますね。前向きなニュースだと思うけど、現場で課題はないのかしら。

村井:35人学級には、一人一人の生徒のニーズに応じたきめ細かな指導を可能とするなどの利点があります。ただし、今後、質の高い教員をしっかりと確保していく必要があります。また、さいたま市のように、ありがたいことに子供の数が増えているところは、学校によっては教室不足への対応が必要となってきます。

三浦:こうやって話を聞くと、昭和の香りを色濃く残す公立小中学校にも、大きな変革の時代がいよいよ近づいてきていますね。村井さんには、子育て世代の代表として、現場の声をしっかり聞きとってもらいつつ、大きな視点で、これからの時代に求められる人材を育成する教育改革に取り組んでもらいたいです。

村井:はい、小さい子供を育てている国会議員って少ないので、現場の感覚をしっかり政策に反映させられるように頑張ります。今日はありがとうございました。

三浦:こちらこそありがとうございました。