火曜日に宮沢大臣、甘利大臣に申し入れをした提言の中身です。大部ですが、全文を掲載させて頂きます。また、提言は、中小企業政策調査会の下に設定され中小企業政策全般をチェックする「中小企業政策実行検討委員会」、私が事務局長を務めた「中小企業金融のあり方検討小委員会」の合同の提言となっております。



地域経済の好循環実現のための提言

~ 「ローカル・アベノミクス」の浸透と
中小企業・小規模事業者の自律的成長に向けて ~


平成27年6月9日
自由民主党 政務調査会

【はじめに】
・ 政権再交代から2年半で、毎年1,800億円規模の中小企業対策や、総計1兆2,000億円の三度の補正予算を最大限活用して中小企業・小規模事業者政策の整備に努め、施策メニューを十分に充実させてきた(参考資料参照)。
同時に、施策策定や執行についても、中小企業基本法の改正、小規模基本法の制定を通じて、きめ細やかかつ適切となるよう努めてきたが、依然として地域の中小企業・小規模事業者からは、「政策が届かない」との声があげられているのも事実である。
・ これまで政治の現場では、「今、見えている課題」に向けて新しい政策を打ち出す事に力点が置かれていた。その反面、「打ち出した政策のフォローアップ」への視点・体制が十分では無かったとも言える。
・ すでに充実している施策ラインナップが、意欲有る経営者に適切に活用されることで、中小企業・小規模事業者が、地域の暮らしを守る雇用力と、社会を支える担税力、そして地域の特性を活かしたわが国の「新たな価値」を産む創造力を備えた、わが国の発展を支える柱となって頂く。
この目標に向けて、本調査会の下に設置された、『中小企業政策実行検討小委員会』で議論を重ねた結果、
①政府全体の施策を利用しやすく整理する
②施策を届ける地域の窓口機能を一本化・強化する
③それら地域窓口からのフィードバックを次なる施策に活かす
を柱とする「政策の実効性向上のための循環システム」を構築し、施策効果が出るまで、当小委員会そのものが、引き続き伴走支援を続ける事としたい。

・ また、全国385万者の中小企業・小規模事業者にとって、健全な地域金融システムは企業経営に不可欠であり、ローカル・アベノミクスの推進のためにも、中小企業金融のあり方については、不断の見直しが重要である。
・ 特に安倍政権の2年半の間で、中小企業金融を巡る情勢は、「大胆な金融緩和」、「金融円滑化法の終了」、「金融検査の危機モードからの平常化」など大きく変化してきた。
・ 本調査会の下に設置された、『中小企業金融のあり方検討小委員会』は、かかる問題意識に基づき、有識者・役所・地域金融機関等からヒアリングを行い、あるべき中小企業金融に向けて必要な施策について検討を進めた。

・ 以下、2つの小委員会における精力的かつ真摯な議論の成果を取りまとめ、中小企業・小規模事業者政策調査会として今後の方向性を提言するものである。


【中小企業政策実行検討小委員会】
1.「成果までとことんやる」体制つくり:政治の役割
・ 当小委員会において、中小企業・小規模事業者育成・支援の目的達成に資する施策を省庁横断でリストアップし、相乗効果を上げるような政策間連携や、機能が重複する複数施策の調整など、横串を通した総合的な施策メニュー提供を行う。
・ さらに、これまでの施策の実行状況や、地域の窓口や関連組織が十分にその役割期待を果たしているかを、政府と共に継続的にチェックし、その結果を中長期的な中小企業・小規模事業者政策議論に反映する体制を強化する。


2.「よろず」に行けば大丈夫:ユーザーからわかりやすい支援体制の整理
・ これまで、様々な事情から、地域での中小企業・小規模事業者支援体制に関する施策は短期間での変遷を余儀なくされており、ユーザーサイドからは「どこに相談すれば良いかわからない」という状態となっていた。
・ そこで、経営支援については、まずは「よろず支援拠点(以下、よろず)」のワンストップサービスとしての役割を一層明確化し、「よろずに行けば大丈夫」という期待感と安心感を醸成する事に注力する事とした。そのためには、既存の中小企業団体や認定支援機関、各種業界団体、地域の民間支援機関や人材などとの連携が重要であり、政府はこれに向けて誘導すると共に、その機能を担うに相応しく、「よろず」の体制の大幅な拡充・強化を行うべきである。なお、具体的な支援に必要な予算は、中小企業庁予算の拡大に加えて、政策目的が表裏一体の他省庁の資金活用も政治的に目指すこととする。
・ そのために、地域の各組織は、以下の通りに整備・強化されるべき。

(1)よろず支援拠点
□「経営支援=よろず」を常識化
・ まずは、「よろず」が地域の経営支援の柱であることを、各地域で「常識化」する事に、注力をする。そのために、現状の「相談件数」のみならず、数値目標を含むより具体的な評価項目(KPI)をよろず支援拠点全国本部(以下、本部)と政府が連携して設定し、その達成管理を通じて全国の「よろず」の平均水準引き上げを早急に行うこととする。
・ 「よろず」が経営支援の中核との認識が定着し、また必要最小限の機能を備えた後は、地域独自の強みが最大限発揮されるよう、地域カ毎のカスタマイズが進む事が望ましい(例えば、農業や福祉が地域の稼ぎの柱となる地域においては、これらセクターへの積極的な支援も可能、等)。

□アクセシビリティの向上
・ 現状の「県単位に一カ所」では遠隔地の事業者は利用しにくいのが現状。
まずは各地域のその他中小企業団体・関係団体との連携が基本だが、同時にサテライトオフィス等の設置も規定する。

□人材確保・育成の取り組み
・ よろずが成果を出すためには、事業者のニーズに即した支援人材の確保が急務であり、当面は外部からの登用を進める。同時に中小企業大学校等を活用しての人材育成の仕組み強化も重要で、そのためには同大学校のカリキュラムの見直しも進める。
・ 優秀な人材誘引のためには、報酬にインセンティヴシステムの導入が必要。成果に併せて拠点内で傾斜配分を許したり、成績優秀な「よろず」には政府・本部からインセンティヴを付与する等の施策も検討する。
・ 地域の「よろず」に、外部人材や組織が集い、情報交換や地域内連携を図る「フォーラム」の設置を規定する。政府は、この「フォーラム」に地域の優秀人材が集まるような誘導施策を積極的に進め、定期的に「フォーラム」間の交流を図る場づくりにも努める。
・ よろず本部に、f-Bizの小出宗昭氏はじめ各地域「よろず」の一人者を集めた「ドリームチーム」を組成し、「よろず」の支援手法の高度化と人材の高度化を図る。また、そこに各「よろず」からコーディネーター、サブコーディネーターを送り込んで、「虎の穴方式」の育成機関とする。

□現場から国へのフィードバック機能の規定
・ 相談件数を本部に報告するのみならず、現場でキャッチしたヴィヴィッドな情報を整理して報告することで、国や市区町村が政策立案する際に、政策の精確性と即時対応性を高めるためのアンテナ機能を規定する。


(2)商工会・商工会議所・中小企業団体中央会など
□地域全体の経済に対する責任をリードする存在へ
・ 従来から最も身近な支援機関である、商工会・商工会議所・中小企業団体中央会などが地域で担う責任は変わらない。特に、人口減少社会におけるそれぞれの地域の将来像を描いた上で、地域の事業者の経営改善を通じて実現させるための強いリーダーシップの発揮が期待されている。
・ 特に、中小企業・小規模事業者の経営支援では、今まで以上に地方公共団体や、地域へのマネー供給を担う地域金融機関の役割発揮が期待されている。どうしても「立場」の範囲でしか機能を発揮しにくい両者に対し、上記将来像を共有した上で、「役割」をどう分担するかの議論のリーダーシップも期待されている。
・ そのためにも、小規模事業者支援法に基づく「経営発達支援計画」の認定取得に取り組むとともに、認定取得後も不断に支援能力の向上を図っていくことが必要。そのためには、経営支援専従の業務量の確保や、職員の能力向上が一層必要である事は言を俟たない。政府側も、認定した取組の確認・指導を通じて、支援能力の向上をしっかり求めていくべき。
・ また、各地で経営支援を行う商工会・商工会議所等のサポート役である、全国商工会連合会、日本商工会議所等の全国団体においても、行動計画等を策定して、各地諸団体等のサポートを充実することが必要。政府は、全国団体との協議会を設立して、そうした取組の実施状況を厳しく確認していくべき。

(3)認定支援機関
□位置づけの明確化と絞り込みへ
・ 約24,000の認定支援機関が、新事業展開や事業計画策定などで支援活動をしているが、既存の中小企業団体や「よろず」との位置付けも明確では無い事から、整理が必要。
・ また、総ての支援機関が必ずしも経営支援に前向きではない、という報告も有る事から、得意分野や技能水準の見える化により、適切な認定支援機関の可視化を進め、必要で有れば更新制の導入等の制度の改正も視野に入れ、国が責任を持って信頼される支援機関の絞り込みを図るべき。

3.支援策の見える化を積極的に進める
・ 「ミラサポ」の内容の一層の充実(①他省庁施策、②地方公共団体施策、③補助金など期限付き施策の明確化、④一覧性の改善)、使い勝手の向上とそのためのフィードバック機能の追加、そしてテレビや新聞などを利用して「ミラサポ」そのものの周知徹底も図る。
・ また、これまでの施策説明会開催やパンフレット配布などについては、費用対効果を見直しつつより改善した充実に加え、事業者のみならず支援機関への支援も担っている、中小基盤整備機構による取組の充実等を通じて、より一層きめ細かい周知活動に取り組む。


4.今後の継続的検討課題
小委員会の議論で、「今すぐ」対応することは困難だが、調査会において継続的に検討すべき課題として、以下、報告する。


(1)現在顕在化している課題への対応について
・ 親事業者が業績回復しても、子事業者に利益転嫁されない、「利益『非』転嫁問題」(⇒政治的な対応の必要性)。
・ 働き手が減少する地方で、構造的に一層困難となっている業種(土木建築業、運送業、製造業など)の「人材獲得問題」(⇒地域全体で産業を見直すことによる、魅力的な産業への再構成の必要性)。
・ 国際競争の中で加速度的に進む、製造業の下請け構造の衰退(⇒県などの行政区分を越えた産業のリストラクチャリングの必要性)。


(2)中小企業・小規模事業者政策の対象の明確化
・ 中小企業・小規模事業者は、規模でも業績でも産業でも置かれた地域の状況に置いても極めて多種多様であり、「一般化」が難しい。
・ 国政の場で中小企業・小規模事業者政策を議論する際も、人によって念頭に置く「企業・事業者」が統一されていない事から、議論がすれ違う事が散見される。またその性格上、国の施策は最大公約数的になってしまうため、個々の企業・事業者には、「いま一つしっくり来ない」という印象を与える事となる。
・ そこで、例えば別紙2のように、企業・事業者を現状に鑑みて分類した上で、それぞれの主体者にとって最適な政策について議論をする仕組みとする事で、より効率的な政策提供・実効性のある活用が促進できる(分類については、今後詳細な議論が必要)。なおこの分類は、経営者の意思・努力と支援者の適切な支援によって変化するものであり、政治としては、そのような力強いチャレンジをしっかり応援していくのが役割と考える。
・ また、これまでも当調査会で主張してきた通り、「課題の抽出・解決の支援の主体者は、地方公共団体や地域金融機関などの地方のプレイヤー」であり、本来国政は最大公約数的なサポート役であるべきだ、という事を、改めて確認をしたい。


(3)長期見通しに基づいた、中小企業・小規模事業者政策のKPI設定
・ 過去10年程度で100万者の中小企業・小規模事業者が減少している現状に鑑みれば、「中小企業・小規模事業者対策は一刻を争う」という認識を、わが国隅々まで「常識化」する必要が有る。
・ そのためには、政府が、中小企業・小規模事業者をとりまく状況についての長期の予測を作成・提示し、地方自治体や関連中小企業団体が自らの地域についての将来像作りのサポートをすることも必要。
・ 例えば、「2050年国民1億人時代の生活を支える雇用を創出するには、何社・者の中小企業・小規模事業者が必要で、その達成にはどのような道程が必要か」という視点から、それを達成するためのKPIの設定などで、大きな方向性を示すことができると考える。
・ なお、今後を考える際、「高みを目指す」攻めの成長戦略も重要だが、「戦略的撤退の視点で、地域単位・産業単位・サプライチェーン単位で、改めて21世紀でも勝てる態勢に再構築する」という考え方も重要である。


【中小企業金融のあり方検討小委員会】
1.「ひと手間かけて育てる金融」の推進
・ 近年、地域金融機関の貸出残高は増加基調だが、その内訳は、東京等における大企業向け貸出、地方公共団体向け貸出、個人向け住宅ローンの増加が大きく寄与しており、優良貸出先への融資競争が生じている。各地域金融機関は、合理的な企業活動として、融資審査のコストを下げるため、担保・保証、財務データに必要以上に依存し、優良貸出先中心に融資を行っているが、そうした手法を多くの金融機関が採用した結果、融資競争による収益性の低下を招く「合成の誤謬」が発生している。
・ 地域金融機関のこうした融資姿勢は、金融機関のみならず、地域金融機関にコンサルティング機能やリスクマネー供給を期待する利用者や地域経済にとっても、マイナスの結果となっている。
・ つまり、地域金融機関は、地域経済のため、利用者のため、そして自らのためにも、地域経済の核となって目利き力を発揮し、知的資産と言われるような企業価値も含めて企業の事業性を評価し、ビジネスマッチング、販路開拓支援、海外展開支援、人材支援・紹介など、地元企業を「ひと手間かけて育てる」ことが大切である。また、行政側には、地域金融機関が「ひと手間かけて育てる金融」が行いやすい環境、インセンティブを整えることが求められている。
・ そうした問題意識から、既に金融庁においては、平成26事務年度金融モニタリング基本方針で「金融機関の自己査定の尊重」、「事業性評価の重要性」を明記する等、地域金融機関に対して、目利き力の発揮・コンサルティング機能の発揮を促している。また、中小企業・小規模事業者の経営改善や地域経済活性化に関する取組方針や取組実績等の情報発信内容が、具体的で分かりやすいものとなるよう、銀行法施行規則・監督指針の改正も行っている。さらには、各財務局において、地域密着型金融に関する特に優れた取組についての顕彰も実施している。
・ こうした金融庁の取組については評価しつつ、地域金融機関が地域経済の核として、経営改善・事業再生などの「ひと手間かけて育てる金融」により一層取組むように、また、利用者目線にたって真に役立つ金融機関を「見える化」し、こうした金融機関が生き残っていく金融構造を実現するために、地域金融機関の情報発信を更に推進する必要がある。
・ 具体的には、既に、金融機関に対して中小企業の経営の改善及び地域の活性化のための取組状況の公表が義務付けられているが、加えて、地域金融機関は、自らの取組みを「見える化」する観点から、例えば、以下のような項目について整理・公表を検討すべきである。その際、量的な貸出競争から脱却し、各地域の特性や利用者のニーズ等を踏まえた創意工夫ある取組みがなされるよう、各地域金融機関において、効果的な情報発信を検討すべきである。
・ 今後、こうした「ひと手間かけて育てる金融」の進展について、定量的なスコアリング手法以外の事業性評価の取組状況についても着目しつつフォローアップし、必要に応じて、具体的な実績の数値も含めた更に踏み込んだ情報発信についても検討する。
<整理・公表を検討すべき項目例>
 別紙3に記載


・ その際、金融機関のみならず事業者に対して各金融機関の取組状況が浸透するよう、周知方法を検討するとともに、事業者からの各金融機関に対する評価を反映させた形で表彰できないかについても検討すること。
・ また、金融機関が目利き力を発揮し、中小企業の経営改善・事業再生等に前向きに取組むよう促すためには、信用保証制度とその運用について、金融機関がモラルハザードに陥らないよう、適切なリスク負担をすることが必要である。中小企業・小規模事業者の経営環境等に配慮し資金繰りに万全を期すと同時に、新事業創出等のリスクの高い分野への資金供給を促進する観点も含め、こうした信用保証制度のあり方について本年中に検討を進め、あるべき方向性を示し、その後必要な措置を講ずべきである。


2.経営改善計画策定の推進
・ 多くの企業にとって経営の高度化を図っていくことが何より大切であり、「経営改善計画」の策定はそのための重要なツール。その際には、事業面と金融面の両面から実現可能性が高く、それぞれの中小企業・小規模事業者に適合した経営改善計画を立てていく必要がある。そのため、中小企業・小規模事業者に最も身近な支援機関としての認定支援機関の能力をより高めていく必要もある。
・ その一方で、ほとんど中小企業・小規模事業者の支援実績がない認定支援機関が存在するのも事実。また、いくつかの補助事業で認定支援機関の関与を求めているが、補助事業の申請に対して高額な着手金を取ることや成功報酬を求めている例も存在するとの指摘もある。
・ まずは、2万を超える認定支援機関を評価する仕組みを導入したうえで、実績の高い認定支援機関を中小企業・小規模事業者に対して「見える化」していくことが必要。場合によっては、更新制の導入により認定支援機関のレベルを引き上げていくことも検討すべきではないか。
・ 具体的には、金融機関・よろず支援拠点・中小企業再生支援協議会は、優良認定支援機関の情報を共有し、利用者・相談者に積極的に周知していくべき。優秀な認定支援機関は表彰を行うことも検討し、よりビジネス的なインセンティブを与えていくことも重要ではないか。

3.市区町村レベルの経営支援体制の強化
・ 金融機関や認定支援機関では対応が出来ないような経営不振企業に対しては、事業活動により地域が支えられるという点からも、行政が積極的に関与をする経営改善・事業再生のプロによる支援が必要である。
・ その点、市区町村レベルで事業者の経営改善・事業再生支援を行う、板橋区立企業活性化センターの取組「板橋モデル」を全国展開していくことが重要。(都道府県に一つの)よろず支援拠点についてもその機能強化を進めつつ、企業活性化に前向きな市区町村については、板橋モデルを念頭に市区町村レベルでのきめ細やかな経営支援体制整備を支援していく。
・ そのために、「板橋モデル」のような経営改善・事業再生支援を実施することに前向きな地方自治体に対しては、関係省庁が支援を行うこと。


4.その他
(1)経営者保証に関するガイドラインの更なる周知・普及の徹底
・ 企業の新陳代謝を促し、経営者の個人保証に依存してきた融資慣行を改善するため、昨年2月から「経営者保証に関するガイドライン」の運用がスタート。
・ 個人保証を求めない融資(入口段階)については一定の実績が出ているものの、保証債務整理時のガイドライン対応(出口段階)については、活用実績がまだ低調に留まっている。
・ そのため、経営者の再チャレンジ、経営者自身へのサポートという観点からも、①事業者に対するガイドラインの更なる周知・普及の徹底、②政府系金融機関・民間金融機関による更なるガイドラインの活用と実績の公表、③保証債務整理局面において残す資産の範囲を「見える化」するための事案の集積と公表、といった取組を推進していく必要がある。


(2)自治体の損失補償付制度融資等における求償権放棄に係る対応
・ 中小企業・小規模事業者の債務整理局面において、自治体の損失補償付制度融資等にかかる信用保証協会の求償権の放棄に際して、個別案件ごとに地方自治体の議会の決議が必要となる場合等、法令上・規定上の障害があり、中小企業・小規模事業者の円滑な再生や清算に支障を来たすおそれがある。
・ こうした障害を取り除くため、内閣府・金融庁・総務省・中小企業庁といった関係省庁からの地方自治体への働きかけや、政府系金融機関における関連規定の整備等の必要な措置を講ずべきである。


(3)バーゼル規制など国際的な規制強化への適切な対応
・ バーゼル銀行監督委員会で議論されている「信用リスクに係る標準的手法の見直し」については、金融機関(特に地銀、信金など)が行う中堅・中小企業向けの資金供給に影響を与え、結果的に中小企業・小規模事業者の円滑な資金調達を阻害する可能性があるため、今後も重大な関心を持って動向を注視し、わが国の経済成長を阻害することのないよう、必要に応じてバーゼル委員会に対して意見を出し、ルール形成に反映していくべきである。


(4)経営相談支援体制の大幅な拡充・強化
・ よろず支援拠点、認定支援機関(商工会議所・商工会・金融機関・士業等)、経営改善支援センター、市区町村レベルの支援センターといった様々な相談窓口が用意されているが、中小企業・小規模事業者からすると、それぞれの機関の役割、相互の関係性も分かりづらいものとなっている。各相談支援機関の責任の所在を明確にする意味でも、経営相談支援体制については、その実態を踏まえつつ、各機関の役割の体系的な整理が必要である。

以  上

 


― 開 催 記 録 ―
〔中小企業政策実行検討小委員会〕
4月 7日(火) 日本再興戦略におけるKPIの現状と今後の取組について
4月21日(火) 施策の周知・広報に関するヒアリング
中小企業庁、中小企業基盤整備機構、日本商工会議所
全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会
小出 宗昭 富士市産業支援センターセンター長
 5月12日(火) 現場の若手経営指導員からヒアリング
茨城県笠間市商工会 藤本 隆幸 経営指導員
埼玉県秩父商工会議所 黒澤 元国 経営指導員
岡山県よろず支援拠点 鈴鹿 和彦 コーディネーター
 5月15日(金) 中小企業庁の主要施策についてヒアリング
【ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、
経営改善計画策定支援 等】
 5月19日(火) 各省庁における中小企業施策の取組状況について
〔国土交通省、農林水産省、厚生労働省〕
 5月22日(金) ①関係自治体から中小企業施策の取組についてヒアリング
鈴木  力 新潟県燕市長
中村 五木 熊本県天草市長
②取りまとめ骨子案について
 5月27日(水) 取りまとめ骨子案について

〔中小企業金融のあり方検討小委員会〕
3月31日(火) 再生・経営改善の取組の現状と課題について有識者ヒアリング
中嶋  修 板橋区立企業活性化センターセンター長
板橋区創業支援ネットワーク事務局長
村山 幹夫 公益社団法人板橋区産業振興公社
企業サポートマネージャー
4月14日(火) 経営者保証に関するガイドラインの
実行状況について有識者ヒアリング
小林 信明 長島・大野・常松法律事務所パートナー
日本政策金融公庫
商工組合中央金庫
 5月12日(火) ①地域金融のあり方について〔地方銀行協会からヒアリング〕
②バーゼル規制への対応について
〔金融庁、日本銀行、日本商工会議所からヒアリング〕
 5月26日(火) 取りまとめ骨子案について

 


(別紙1)
平成27年5月27日
中小企業政策実行検討小委員会


小委員会における議論の整理


○「政策が所期の目的に合わせて実効性を上げる」ためには、下記のような「政策」「周知」「活用」「環境」の4項目に要素分解して課題を把握することで、問題の本質がぶれずに「当面の取り組み」が抽出でき、政策の実効性を高める事ができる。
政 策 課題に対し適時・適切な内容か、量的に十分か、ムダ(省庁間・国と県、市区町村や民間との間に重複など)が無いか等
周 知 利用者から見て政策が見え易い形になっているか、経営支援側が連携できているか等
活 用 経営者が適切に政策を活用できているか(主体者要因)、活用し易い制度か(時期や制度運営者の問題など、客体的要因)等
環 境 他の総ての要素は適切であっても、環境が成果への阻害要因になっていないか等
○小委員会で指摘された、中小企業政策の現状および課題を、上記4項目で整理すると以下の通りとなる。


1.政 策
・政策ラインナップについては、概ね、必要なものは揃っているという評価。海外展開については更なる深掘りが出来ないかの指摘が有った。
・最大公約数とならざるを得ない国の施策では、千差万別な中小企業者に対するきめ細やかな対応が困難。また、現場からの情報の吸い上げも遅い。
・市区町村の政策の連携や重複排除や、他省庁でも連携・活用可能な政策とのすりあわせが必ずしもされていない。
・国の中小企業・小規模事業者政策は、時間経過とともに進化・精緻化されている一方、同じような議論が何度も繰り返しているものもある。より長期的・骨太な中小企業行政の方針策定の必要性や、産業別のきめ細やかなPDCA管理体制の必要性も提起有った。


2.周 知
・「政策が届いていない」という声に代表されるように、必要な時に、必要な対象に、必要な政策が届けられていない。
・誰に相談をしてよいのかわからない、一県一カ所の窓口では遠隔地からは利用しづらいとの指摘有り。一方で、後述の「人材不足」の観点から、より広域化して高度専門人材を集約する「総合病院」的運用の必要性も指摘された。
・地域の支援人材・組織間の連携が不足。そもそもある程度の水準になると、人材そのものが不足しており、既存組織が十全に機能を発揮しきっていないとの指摘も多かった。
・一方で、地域の支援人材・組織側からは、「企業支援に割ける業務量が少ない」「人材不足」「優秀な人材は流出してしまう」「他の支援人材・組織との棲み分けが不明。目標が共有されていないために役割分担ができず、立場での議論に終始」等の意見あり。
・ミラサポについては、ミラサポそのものの周知不足、使い勝手の不便さと、中身の充実、そしてフィードバック機能の未然などの指摘があった。


3.活 用
・補助金の活用について、①補正予算に盛り込まれる事が多いため、周知期間や利用者側の準備期間が短くて広範に利用され難いこと、継続性への予見可能性が低い等の本質的な問題と、②採択時に運用面での改善の必要性等が指摘された。
・一方で、経営者への啓蒙活動の必要性も指摘された。特に、自らの状況を把握できる、事業計画策定能力などは優先順位が高い(「手遅れ」となる一歩手前で如何に気づく重要性や、M&A等を経営手法の拡大を含む)。
・また、周知と裏表であるが、地域の支援人材・組織から経営者への施策利用の働きかけがより積極的になるよう促す仕組み作りについても指摘が有った。


4.環 境
・中小企業・小規模事業者の経営状況は、個々の努力も重要な一方、事業展開する地域の盛衰や、所属するサプライチェーンの状況、果ては少子高齢化などの外部の環境によって左右される事が多い(最近の課題である、コストプッシュインフレや、親事業者の業績回復が反映されない「利益「非」転嫁構造」なども、外部環境要因)。
・「いつまでに状況を改善しなければならない」という目処が無い中で、事態解決を先延ばしにする事が、政策の利用に踏み切らない側面も有る。
・また、地域社会での「世間の目」が、政策を利用させる事へのハードルになっているという指摘も、現実に鑑みると看過はできない。

以  上


(別紙2)
 


(別紙3)

<項目例>
○中小企業等に対して、担保・保証に必要以上に依存せず、事業性評価に基づく融資や助言等を進めるための金融機関の経営方針、そのための行内体制の整備の状況  等


○中小企業者向け融資に係る基本的な情報
① 全融資額に占める中小企業(ベンチャー企業)・小規模事業者向け等の融資先の融資額の割合
② 全融資額に占める債務者区分(正常先・要注意先等)毎の融資額の割合
③ 全融資額に占める信用保証付き融資額の割合
④ 預貸率 等
 
○地域に根ざした金融・地域活性化に寄与する取組を行っているか明らかにするための情報(地域で集めた資金を首都圏で運用して稼いでいないか)
・ 立地都道府県内と県外の融資額の比率
・ 地方公共団体・経済団体等の関係者との連携による地域の活性化支援の取組み状況
・ 地域での創業支援等の取組み状況  等


○先進的な融資手法への取組の積極性を明らかにするための情報
・ ABL、ノンリコース融資、リバースモーゲージ、資本性貸出金を活用した取組み状況
・ ファンド等との連携状況  等


○経営支援への取組の積極性を明らかにするための情報
・ 外部機関等と連携した経営改善・事業再生支援、事業転換に対するコンサルティングの取組み状況
・ ビジネスマッチング等の販路拡大支援、海外展開支援の取組み状況
・ 経営改善計画を策定し、債務者区分が上がった件数  等


○事業再生・円滑な退出への取組の積極性を明らかにするための情報
・ 経営者保証に関するガイドラインに基づき個人保証に依存せずに融資した件数
・ 経営者保証に関するガイドラインに基づき保証債務の整理を行った件数
・ 事業再生の取組み状況(中小企業再生支援協議会、REVIC、私的整理、再生ファンド等への持ち込み件数) 等


(以  上)