前回の年金積立金の運用改革に引き続き、今日は②医療・介護として、地域包括ケアの取組みをご紹介します。
 高齢化と聞くと、地方における課題であって、埼玉県のような大都市には縁遠い問題だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は、埼玉県の75歳以上人口は、2010年は59万人でしたが、2025年には118万人に、15年で2倍に伸びると予想されています。この伸びは、なんと全国でナンバーワン。高齢化に伴う医療・介護の伸びは、他人事ではないのです。
 夏祭りなど様々な機会を通じて地元の方のお話を直接伺ってきましたが、夫婦で暮らしていて子どもたちは独立し誰に介護してもらえるか不安だ、医療・介護が必要になっても住み慣れた環境でできるだけ長く過ごしたい、という切実な声をいただきました。実に60%以上の国民の方々が「自宅で療養したい」と回答しているというデータもあります。高齢化が進む中で、限られた財源をどのように有効に活用して、皆様の声にできる限り応えていくか。そのために私が重要と考えるのは、地域包括ケア、地域における医療と介護の総合的な連携です。病院から戻ってきても、地域で在宅医療や訪問看護のサービスが十分でないと、すぐに救急車を呼ぶことになり、住み慣れた環境で療養することは到底出来ません。医療と介護の間の垣根を低くし、医療関係者と福祉関係者の連携を強化していくことが重要です。
 こうした在宅を中心としたケアは、北欧諸国でも取り入れられていますが、あくまで公務員が中心となってサービスが提供されています。一方で、日本の地域包括ケアは、民間事業者が中心のサービス提供であり、世界に例のないモデルです。この試みが成功すれば、高齢化が進む国々の模範となるに違いない、私はそう考えます。
 私たちは、今年の通常国会において、地域包括ケアの取り組みをより進める観点から、医療介護総合確保推進法の成立に尽力しました。その審議の中で、野党議員から、これは介護の切り捨てであるとの指摘がありましたが、それは誤解です。私たちが目指すのは、全国一律の予防給付から、地域の実情に合った多様な支援への移行です。実際には、ここさいたま市のような大都市と、人口の少ない過疎地域では必要なサービスは全く異なります。高齢者の方々のニーズに的確に応えていくには、地域の実情を把握している市町村が中心となって、独自の取組みを進めていくのがベストです。例えば、ある地方では、市町村が、研修を受けた高齢者を含む地域住民が、要支援者の自宅を訪問して掃除・ゴミ出しを行う訪問型生活支援サービスを行うことを支援しています。こうした独自の取組みを通じて、高齢者の方々のスキルを生かした地域活動への参加を支援することで、高齢者の認知症リスクが軽減されたというデータもあります。また、社会保障で「支えられる」側から社会保障を「支える」側に回っていただくことは、持続可能な医療・介護制度にも資するのではないでしょうか。
 これからも、介護の現場で頑張っていただいている介護職員の方の処遇改善や、難病対策、認知症対策にしっかりと取り組み、限られた財源の中で質の高い医療・介護サービスの提供に最大限努めて参ります。