ブログのアップが滞っており申し訳ありません。村井英樹は、通常国会の残務処理、次期通常国会に向けての準備、地元活動など、元気いっぱい活動を続けております。

 

今日から数回に分けて、地元で最も説明を求められることの多い、7月1日に閣議決定されました、集団的自衛権の問題を含む安全保障体制の整備について、議論を整理してみたいと思います。

 

 ○この閣議決定の趣旨について
現在の日本を取り巻く安全保障環境は、日本国憲法が制定された当時とは大きく異なっています。当時は、米国の巨大な軍事力が日本を含むこの地域に存在し、冷戦も本格化しておらず、日本にはなんら軍事力が必要ないと考えられていました。それから70年近くが経過し、弾道ミサイルや核開発の技術が高度化し、さらに拡散しています。また、サイバーの世界や宇宙の利用も進んでいますし、世界的なテロリズムも引き続き大きな課題になっています。さらに、北朝鮮の弾道ミサイルの開発、核開発の継続、中国の不透明な形で軍備拡大、南シナ海、東シナ海での領土拡大の動きも見られます。

このような課題を前にして、果たして戦後ずっと続けてきた安全保障法制によって我が国の安全は確保し続けることが可能でしょうか。 今回の閣議決定は、この安全保障法制をもう一度見直して、現代の国際社会にあうものになるよう再度調整しようというものです。


集団的自衛権の行使について
そうした中で最も議論になっているのは集団的自衛権の行使の問題です。 今回の閣議決定は、日本が全面的に集団的自衛権を行使できるようにするものではありません。 日本の国民の安全、財産を守るためには、様々な措置をとる必要があり、極めて限定された場合には、集団的自衛権を行使することも現行憲法下でも許されるのではないかという問題意識です。

抽象的な議論はわかりにくいので、誤解を恐れず具体的な例を挙げてみます。 仮に朝鮮半島において戦争が起こったとします。 北朝鮮から韓国に対して、多数のミサイル攻撃、特殊部隊による攻撃、大砲による砲撃が行われ、ソウルが文字通り火の海になってしまいました。 被害国の韓国は、日本を含む国際社会に武力行使を含めた支援を要請しているとします。 北朝鮮からの攻撃に対して、韓国軍、在韓米軍が反撃を開始しています。日本に駐留する在日米軍も、韓国軍を助けるため支援活動を開始しています。 米国だけでなく、英国、豪州、フランス等、多くの国の軍隊がこの地域に集結を始めました。

韓国に滞在する日本人を含めた多くの外国人が韓国からの退避を図ろうとしています。そこで、各国の政府は、まずは朝鮮半島から脱出する外国人等を協力して日本に運ぶ活動を開始しました。 米国や他国は釜山から福岡に向かうフェリーをチャーターし、日本人を含む多くの人々を輸送しています。もちろん、日本も出来る限りの輸送活動を行っています。 海上自衛隊は、その航路周辺の安全が確保されているか、不審な船舶が存在していないか警戒監視活動を行っています。こうした状況下で、日本の領海の外で北朝鮮のものと思われる潜水艇が、日本以外がチャーターしたフェリーの撃沈を狙っていることを海上自衛隊が発見しました。

さて、このような状況下で、海上自衛隊はこの潜水艇を撃沈することが現行の憲法解釈で、また現行の安全保障法制上可能でしょうか。 答えは、否です。

別の例を考えてみましょう。例えば、日本、米国、韓国は北朝鮮から発射されるミサイルを迎撃すべく、海上で情報共有を行いつつ態勢をとっています。この時、北朝鮮が、米国領土(グアムやハワイ)を狙ってミサイルを発射しました。 海上自衛隊はこのミサイルを捕捉し、迎撃する能力があるとします。

さて、このような状況下で、海上自衛隊自衛隊はこのミサイルを撃墜することが現行の憲法解釈で、また現行の安全保障法制上可能でしょうか。答えは、否です。

従来の憲法解釈では、個別的自衛権、つまり日本への攻撃(日本の領土、領海、領空)が行われない(まさに行われようとしている時も含む)限り、 自衛権の発動としての武力の行使ができないことになっています。

今回の閣議決定では、このような極めて限定的な場合、つまり、他国への攻撃が既に発生しており、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、外交交渉その他ではこのような状況が改善できなければ、必要最小限度の範囲で、そのような侵害を武力によって排除することができるようにするものです。

このような活動は国際法上では集団的自衛権の行使と解釈されますが、その活動の本質は、他国への攻撃を排除することにより、我が国自身を守ることにあります。

したがって、純粋に他国を守るような形での集団的自衛権の行使は引き続き実施することはありません。 例えば、湾岸戦争のように、イラクがクウェートを侵略し、米軍などを主力とする多国籍軍がイラク軍を撃破しましたが、このような戦争は、我が国の存立を脅かすものとは考えられず、我が国が集団的自衛権を行使しクウェートやイラクに自衛隊を派遣して、イラク軍と直接戦争するようなことはありません。ただし、このような場合でも、イラクが機雷を日本の重要な交通路に大量に敷設し、それによって、日本の経済が大混乱を起こすような場合には、そうした機雷を除去する活動を行うことはあり得ます。また、戦争終了後の国の復興等のためになんらかの支援活動を行うことは考えられます。

 

以上、閣議決定の趣旨等について、説明をさせて頂きました。明日以降は、よくある質問にお答えさせて頂きます。

 

なお、ご興味のある方には、是非、閣議決定本文や有識者懇談会の報告書もお読みいただければと思います。

「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成26年7月1日閣議決定)
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf
閣議決定に関する一問一答
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/anzenhoshouhousei.html
7月1日安倍総理記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0701kaiken.html
安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/