駅立ちやポスティングが始まり、有権者の方々から様々なご意見やご質問を受けることが増えてきました。何人かの方から、「成長戦略」についての考え方を問われましたので、今後数回に分けて、私の考え方を紹介したいと思います。


 これからの日本は何で食べていくのか。今後も自動車や家電産業に頼れるのか。新しい基幹産業は何か。どのような経済社会像を描くにしても、まず将来の経済構造について明確な見通しを持つことが不可欠です。


私が考える今後30年間の経済のキーワード。それは、「グローバル化」と「知識経済化」です。まず、グローバル化とは、単に日本企業が製品を輸出したり海外に投資したりすることを意味するのではありません。企業内のヒト、モノ、カネ、情報の流れが世界規模に拡大することを意味します。その中では「日本企業」の定義すら曖昧になります。例えば一つの製品の開発から流通までの流れをとってみても、アメリカの大学でインド人とイスラエル人が行った基礎研究をベースに、東京本社で日本人とフランス人が共同開発した製品を、ドイツや韓国企業の基幹部品を使ってベトナムの工場で組み立て、中国に輸出する、といったようにです。今後、多くの産業でこうした世界規模での「専業化」と「分業化」が進むでしょう。


グローバル化の中では、企業は、研究開発や製品企画、製造、販売などバリューチェーンの各段階を世界規模で最適化します。研究開発は大学などの研究基盤が充実し優秀な研究者を集めやすい地域、製品企画は業界のトレンドや消費者のニーズを把握しやすい地域、製造は労働コストの安い地域、販売は大きな需要が見込まれる地域に立地することになります。真の意味でグローバル化した経済では、日本に本社を置く企業であっても、日本で行うのは「日本でしか出来ないこと」に限定され、日本に立地することが合理的でない業務は海外に移転していきます。これまで我が国では工場の海外移転による「製造業の空洞化」が懸念されてきましたが、海外移転の可能性があるのは工場だけではありません。日本で十分な研究開発が出来なくなれば、本社機能そのものを海外に移転する「頭脳の空洞化」も起こりえます。グローバル化とは、企業が自由に国家を選ぶことのできる時代の到来を意味するのです。


然ながら、グローバル経済の下で国家と企業の利害は一致しません。日本企業が繁栄しても、国家全体は没落していくことも十分に考えられます。国家としては、国民に十分な富や雇用を保障するために、世界規模で広がるバリューチェーンの中でより付加価値の高いプロセスを国内に呼び込む必要があります。グローバル経済の中で最も付加価値の高いプロセスは、新しいアイデアを生み出すことです。モノもカネも情報も世界中から簡単に手に入るようになりますが、革新的なアイデアを生み出し続ける優秀な人材だけは簡単に育成したり集めたりすることができません。グローバル経済の中で、富は新しいアイデアを生み出す人材に集まる。これが、第2のキーワードである「知識経済化」の意味するところです。


成長戦略シリーズ。次回は、「我が国の成長戦略の方向性② ~アップルが示唆すること~」です。




先日、ポスター用の写真撮影をしました。ポーズを変えながら、3時間。納得のいく写真が取れました。
村井ひできのブログ
写真撮影の風景です。