【バレエ 春の祭典】 | 村の黒うさぎのブログ 

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大自然の中で育って、都会の結婚生活へ。日常生活の中のイベント、出来事、雑感を、エッセイにしています。脚色はせず、ありのままに書き続けて来ました。

 

新婚の日に、コンサートへ行くはずだった。そして「パリ・オペラ座バレエ団」の公演を観るはずだった。
その新婚の時、私はインフルエンザで、行くことは叶わなかった。
引き出しの小物入れを見返していたら、33年前の「パリ・オペラ座バレエ団」の未使用のチケットがあった。

最近SNS上で、私が見損ねたと思われる公演の映像を、観ることが叶った。感無量である。



■世界初演 バレエ「春の祭典」

ストラヴィンスキー作曲 舞踊音楽「春の祭典」
1913年、興行師ディアギレフ率いるロシアバレエ団により、パリのシャンゼリゼ劇場で初演された。
指揮者 ピエール・モントウー
振り付け師 バーツラフ・ニジンスキー
構成 第一幕「大地礼讃」 第二幕「いけにえ」

※私は33年前、この復刻版を観そこねたのだった。

■バレエ「春の祭典」のあらまし
1913年、この前代未聞の前衛的な音楽を聴いて、始まりの数小節から聴衆の間で大騒ぎが起こった。これは後の世まで語り継がれている。不協和音が飛び交うその音楽は、パリの聴衆の間にセンセーションを巻き起した。

しかし初演の悪評に関わらず、やがて音楽単独でも、ヨーロッパ各地で数多く演奏される様になっていった。このユニークな傑作は、現代音楽の古典として、その地位は不動である。

バレエ「春の祭典」ストーリー構成
舞台は古代ロシア。大陽神に捧げられるために選ばれた乙女が、祭壇の前でいけにえになるまでの、異教徒達の太古の儀式のありさまで、二つの場面から構成されている。

第1部 大地礼讃
第1曲 序奏
第2曲 春のきざしー乙女達の踊り
第3曲 誘拐
第4曲 春の踊り
第5曲 敵の都の人々の戯れ
第6曲 賢人の行列
第7曲 大地へのくちづけ
第8曲 大地の踊り


第2部 いけにえ
第1曲 序奏
第2曲 乙女たちの神秘的なつどい
第3曲 いけにえの賛美
第4曲 祖先の呼び出し
第5曲 祖先の儀式
第6曲 いけにえの踊り

■ロシアバレエ団「春の祭典」の復刻版
ロシアバレエ団が世界初演をしている。
※添付の映像では、マリンスキーバレエ団が復刻上演している

Mariinsky Ballet Le Sacre du Printemps
https://youtu.be/NQQR-GU14sQ?si=hjD1TIxTd7HmaIbU

第1部「大地礼讃」では、1913年の初演時の衣裳、振り付けが再現されている。
世界初演のその舞台の復刻版について、私の感想である。
バレリーナの装束・衣裳は、一人ひとりが春の祭典の音楽のイメージを絶妙に体現していて、素晴らしい。
反面、振り付けは、一つひとつの事象に分かれていて、まとまりが無い様に感じられる。

第2部「いけにえ」では、初演から十数年経た版で、演出されている。「シャネル5番」で有名なデザイナー、「ココ・シャネル」が衣裳デザインを手がけている。
この版は、初演時、聴衆の評判は良かった。
薄紅色の色調のロングドレスで、乙女達は、幾筋ものロングの三つ編みを振り乱して、踊りに踊る。
太陽神に捧げられたいけにえの乙女は、選ばれた誇りを胸に、最期は高らかに掲げられる。

かつて私がインフルエンザで観ることの叶わなかった舞台を、SNS上でこうして観られることに、感無量だ。

■「ベジャール」の春の祭典
バレエ「春の祭典」の世界初演を復刻版で観て、バレリーナの装束・衣裳は素晴らしい反面、振り付けは、前述の様に、まとまりが無い様に感じられる。

そういう意味では、その後20世紀中頃に、モーリス・ベジャールが振り付け・演出した、二十世紀バレエ団(現モーリス・ベジャールバレエ団)の「春の祭典」に、より私は惹かれる。
ベジャールの「春の祭典」の演出は、観る者に分かり易い。人の生の営みを、同数の男女の対で表現して、シンプルに視覚にうったえた。

私は、18歳の時、TV番組「ベジャールの世界」を観て、番組中の二十世紀バレエ団の「春の祭典」に引き込まれた。



■「ノイマイヤー」の春の祭典
更に発展させて、SNS上でジョン・ノイマイヤー振り付け・衣裳デザインの「春の祭典」のバレエ映像も観た。
ノイマイヤーは現在も活躍し、モダンバレエでは故・ベジャールと並び、世界的に著名な振り付け家である。

ノイマイヤーの解釈で印象深いのは、いけにえに選ばれし乙女の、自分が死ぬことへの大きな恐れだ。

太陽の神に選ばれし乙女を探し当てると、やがて群舞は、踊りに踊る-
いけにえの乙女は皆の前に進み出る-自分は太陽神に捧げられるのだと、感慨ある様子-
いけにえの乙女は踊りに踊る。だが我に返ると、死と誇らしさの両方の気持ちに悶え、思い煩う 死の現実を受け入れられない-
死期が近づいて来るほどに怯えて、死にたくないのに死ぬ定めの自分を、最期まで受け入れられなかった-
いけにえの乙女の死を恐れるその様子が、ノイマイヤー版では、心に刻まれた

死への恐れ。それが、神話の世界とは違う、本当の生身の人間の、心の内だと思う。


■まとめ
世界初演の復刻版「春の祭典」は貴重だが、特に第2幕はよいと思う。
ベジャール解釈の「春の祭典」は、分かりやすく、観る者にうったえる力がある。
ノイマイヤー解釈の「春の祭典」は、死を恐れる、いけにえの乙女の姿がよく表現されている。


自分が観ることの叶わなかった、「春の祭典」世界初演バレエの復刻版。
それに加え、好奇心を抱いて発展させて観た、世界的振り付け家、ノイマイヤーが解釈・演出した「春の祭典」の世界観。

いずれも観ることを叶えられて、とても充実した気持ちを抱いている。


(今週は、ブログをもう一つアップしています)