【江戸の風物「屋形船」】 | 村の黒うさぎのブログ 

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大自然の中で育って、都会の結婚生活へ。日常生活の中のイベント、出来事、雑感を、エッセイにしています。脚色はせず、ありのままに書き続けて来ました。

 

春のうららの隅田川
のぼりくだりの船人が
楷のしずくも花と散る
ながめを何にたとうべき

見ずやあけぼの露あびて
我にもの言う桜木を
見ずや夕ぐれ手をのべて
われさしまねく青柳を  (隅田川 竹島羽衣作詞 滝廉太郎作曲)


かつて、滝廉太郎が、隅田川の美しさを歌にした。私は、滝廉太郎が好きだ。

さりとて隅田川が美しかったのは昔の話で、日本の近代化に伴い、隅田川は、どぶ川となった。

東京都内をウォーキングしていれば、川の所々に舟を繋ぐ杭を見つけることができる。「船着き場」と呼ぶのだろうか。
そして、屋形船の発着所といった、ひなびた建物も見かける。
都内に息づいている、一つの文化と云える。

江戸時代の民人の暮らしといえば、私はマンガ家白土三平の、「カムイ伝」を先ず思い浮かべる。高校時代図書館にあって、推薦図書だった。
私の年代では、「カムイ伝」は、社会科の教材としても薦められていた。
内容といえば、とかく農民が重い年貢を取り立てられ、お上に虐げられてばかりいる。そんな様子が描かれた、カムイ伝だった。

私の兄は、大学日本史科の卒業論文で、「木曽の林政史」を論じた。
幕府直轄の"御料林"では、民人による伐採は、厳しく禁じられていた。

その反面で、マンガ家高瀬理穂の「江戸の検屍官」、同じく細野不二彦の「いちまつ捕物帖」など読むと、江戸の庶民の楽しげな生活ぶりが、様々に詳しく描かれている。
また、落語の「熊さん・八っつぁん」に登場するコンビが、江戸の生活を謳歌している様子を、義姉は卒論にまとめた。

カムイ伝の舞台や御料林のある場所-地方の農山村では、厳しい生活のイメージがある江戸時代だった。
しかし、江戸の町人は、現代人の様にあくせく働くことも無く、短い労働時間で、日の出と共に起きて、日の入りと共に活動を終え、なかなか生活を楽しんでいた様子だ。

そして江戸の大商人の楽しみの一つであった、屋形船である。
屋形船から"打ち上げ花火"など見物していた様子が、浮世絵にも描かれている。

千葉に嫁さんに来て、夕刻の東京都内で、屋形船を見かけたものだ。
隅田川などを運航しながら宴会を開き、お刺身の盛り合わせなどに舌鼓をうつ趣向だ。

私は屋形船に、大いに興味を抱いていた。
「川の悪臭が気になって、楽しめたものでは無いよ」
主人からは、そう言われてきた。
屋形船に憧れを抱きつつ、そうして30年が経過した。未だに夏場の川のどぶ臭さは、無くならない。屋形船とか、お造りとかと、唱えてきた割には、私の望みは実現しない。

再び元のきれいな川に戻らない限り、まあ私の望みも、主人につぶされることだろう。おそらく生涯、叶いはしまい。




町内の信用金庫に行ったところ、屋形船が工作されて置かれている。
屋形船に、笠をかむった人々が乗っている場景で、4作品ある。
とても細やかな出来映えで、細工されている。
これは面白い!

そして廃物利用がなされている。
包装紙・竹ひご・アイスクリームの棒・竹皮などで出来ている。お金をかけている部分は、僅かに見える。

何て愉しげな工作だろうか。趣味を持つ有志が寄贈したのであろう。

愉快な思いで、信用金庫を後にした。