【「光る君ヘ」月を見上げあなたを想う-】 | 村の黒うさぎのブログ 

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大自然の中で育って、都会の結婚生活へ。日常生活の中のイベント、出来事、雑感を、エッセイにしています。脚色はせず、ありのままに書き続けて来ました。

 

「まひろ、駆け落ちしよう。誰も知らないところで、二人で暮らそう」
「道長様は、朝廷が活躍の場です。政治を執って、中央からこの国を良くして下さい」
若い二人は惹かれ合いながらも、共なる人生は歩めなかった。

上級貴族の姫、源倫子のサロンでは、まひろの活躍があった。かるた取りでは、断然の一番である。その深い教養は、周囲を驚かせた。倫子は器の大きな人だった。そんなまひろを終始目にとめ、たたえていた。

朝廷の行事では、道長は弓や打毬(だきゅう)に秀でて、活躍する姿があった。また彼らの観戦に集う、姫君達の姿もあった。
打毬でチームを勝利に導いた道長の姿に、倫子は恋こがれた。

道長は倫子と夫婦になったことを、まひろに伝えた。
まひろは下級貴族でありながら、妾(しょう・側室)になるにはプライドが許さなかった。.... いや、道長と添い遂げられるならば、妾でも良いと思い直した。
しかし間合いが悪かった。
「... それはおめでとうございます」
顔をそむけて、まひろは涙を流した。

「まひろ、いい女になったな」
時が経ち、叔父は言う。
まひろは、柳の様に、しなやかな強さのある女になっていた。

一方道長は、右大臣となっていた。事実上、国政を動かせる立場である。その日も、積まれた陳情の書状をこなしていた。
ふと、為時の名前の書状に、まひろの筆跡を見た。
 
藤原為時は、位が六位から五位へと上がった。やがて淡路の国司の内示を受ける。
更にそれは越前の国司へと変わり、とんとん拍子に願いは叶う。
越前の国司は、学識ある為時の能力を、存分に生かせる適所である。

「まひろは道長様と、一体どういう間柄なのだ?!」
父・為時は感心しつつも驚いて、娘に問うていた。
女に生まれて政治に関われずとも、事実上まひろには、右大臣を動かせる器量がある。

まひろと道長。
叶わなかった二人は、折りあるごとに月を見上げ、互いに想いを馳せるのだった。



この藤原道長役の俳優・柄本佑は、「シン・仮面ライダー」で、ライダー2号、いわば主役級を演じている。
「ええ!?この御面相で?」
初めて見た時には驚いた。今はこういう顔立ちが、うける時代か-

 1986年のロードショー、「鹿鳴館」では、沢口靖子が主役を演じた。
そのお相手役が、中井貴一だった。一重まぶたであっさりした、当時で言うところの「しょうゆ顔」に驚いた。
だがそれも、月日と共に感覚が普通になったものだ。
「光る君ヘ」での道長も壮年の役柄になり、この頃の渋さは、なかなかである。

ところで、この大河ドラマでは、藤原道長の既成概念を見事にくつがえした。
「この世をば 我が世とぞ思う 望月の 欠けたることも 無しと思えば」
4人の娘を天皇に嫁がせて、道長はそう詠んだ。栄華を誇り、おごり高ぶった道長の歌である。
ところがドラマでは、欲は無く、出世に無関心で、関白に成ろうともしない。そんな道長は、"のれんに腕押し"というのだろうか。
そして民人のための政治を考えている。

「光る君ヘ」では、舞台の半分は朝廷と内裏だ。
この記事では、政治に関するお話は、全くネタバレしていない。

目まぐるしく進展する政局、時に政変が加わる。それに歴史上の二大人物の恋愛と、女性的イメージある源氏物語の世界感で成り立っている「光る君ヘ」。
これであって、NHK大河ドラマである。



(追記)
まひろと桔梗(清少納言)は、教養深い者同士気が合い、しばしば共に過ごした。まひろの提案をきっかけに、清少納言は「枕草子」の執筆をはじめる。
まひろは、越前の地へお供することになった。道長は更に、左大臣にと成っていた。二人は逢瀬の時を過ごす。
「父を越前の国司にして下さってありがとうございます... 道長様の妾になっていればと、何時も後悔しております」
「まひろを思わない日は、一日とて無い... 越前の地は冷える、体を大切に」
「道長様もお元気で」
二人は抱擁した。