【TVドラマ「アンという名の少女」より】 | 村の黒うさぎのブログ 

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大自然の中で育って、都会の結婚生活へ。日常生活の中のイベント、出来事、雑感を、エッセイにしています。脚色はせず、ありのままに書き続けて来ました。

 

額にまでそばかすがあって、まるでそばかすの中に顔があるみたいなアン。
正面から見れば、輪郭がまるでロバの様なアン。
だけど常に想像力を働かせて、くりくりと動く瞳に豊かな表情。
ファニーフェイスっていうのだろう。
赤茶色の髪。赤毛と言われて来たけれど、14歳になったアンの髪の色も、幼い時と比べてずいぶん茶色が濃くなった。

とても自然の美しい島、カナダのプリンス・エドワード島。
そのアボンリーの村にある、グリーンゲイブルス(緑の切り妻屋根の家)に、アンは住んでいる。

アンの親友ダイアナは、黒髪でえくぼのできる、チャーミングな少女。良妻賢母な母親から、花嫁修業を受けている。

アンに暖かい言葉をかけられて、以来アンに淡い想いを寄せている少年コール。絵を描くのがとても上手。...授業中に、アンの姿を描いていたことがある。

アンの髪を「にんじん」とからかって、アンを逆上させた事のあるギルバート。現在は船に乗って働いている。敢えて悪い行いをして、その罰のトイレ掃除を、黒人の友達のために、一緒にやってあげる様な少年だった。

この舞台と人物達で、物語は繰り広げられる。「赤毛のアン」と同じ設定の上で、赤毛のアンを下敷きにした、また違うストーリーが展開される。


「ねえ、キスをするのって、どんな気分かしら?」
食事中にアンに訊かれて、マシューとマリラは絶句した。
キスを、更に色々に想像して語るアンに対して、二人は声が出ない。

マリラはリンド夫人の家へ伺い、そんなアンにどう答えたものかと相談する。
「そんなこと言う子供には、お仕置きをするのよ」
大勢の子持ちの、リンド夫人のアドバイスだった。
しかしマリラは、その返答には、納得がいかない様子だ。

少女達は学校を終えると、アンを中心に空想の世界で遊ぶ。シェイクスピアの戯曲の、「オフィーリア」に則ったり、ロマンティックな中に浸って遊んでいる。

「あなた達、女子だけでロマンティックなゲームするの、楽しいの?」
美人でおませなクラスメート、プリシーがけしかける。クラスの男子にも声をかけて、キスのゲームをしようと言うのだ。

子供達には、まだ物事の良識の判断が出来ていないのだろう。
部屋に集まり、男女互い違いに円になって座る。円の真ん中でカプセルを回転させて、止まって差した方向の男女同士が、キスをし合うというゲームだ。
...はじめの一組の少年少女が、そうしてキスをした。

「アン、あなたがキスをなさいよ。もっともあなた不細工だから、誰も相手にしないわよね」
プリシーは言う。
「僕がするよ!」
絵の上手なコールが、名乗り出た。
「変わり者同士でお似合いよねえ」
プリシーは更にたたみかける。
コールがアンにキスしようと姿勢をとる一方、アンの方は、フラッシュ・バックに陥った。孤児院でいじめを受けていた時の場景が、目の前に甦ったのだ。コールは、戸惑ってしまった…
…アンは、えい!っとばかりに身を翻すと、コールの頬に軽やかにキスをした。コールとアンは笑みあった。

帰り道を、アンとダイアナは一緒に歩いていた。
「キスって、無理してするものじゃないわよね」
アンにとっての、初めてのキスの感想だった。

マリラは、キスについての模範解答を聞いて来た帰り道、ずっとアンに伝えるべき言葉を反復して、つぶやいていた。
でも、アンはもう既に、初キスを体験していたのだった。

大人が過剰な心配をしなくとも、子供はちゃんと、自分の力で成長してゆくのではないだろうか。

アンの住まいグリーンケーブルスは、すっかり雪化粧していた。
アボンリーの季節は、秋から冬へと、移ろいでいた。

(NHKテレビ番組「アンという名の少女2」から、一話を紹介しました。)


[秋のグリーンゲイブルス]


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