時々ふっと思い出す。

高校合格発表の日の事。

年末の面談で無理と言われうちにきた中3女子。

経済的理由で私立はかけず中卒覚悟で希望高だけを受験した。

個人指導て厳しく指導し課題も相当課した。わからない事だらけで英語も数学もボロボロ、それでも毎回笑顔と返事を欠かさず課題も全てやり切った。途中グループクラスも受講させてレベルの認識や距離感を体感させた。1月の最後の確認試験で5教科で100点以上伸ばし希望高の背中が見えるとこまで来た。もう一回確認試験があるなら追いつくがそれはもうない。「ひたすら前を見つめて本試験に賭けろ!」と背中を押した。あんなに厳しく指導したがこの生徒は一度も泣かなかった。逆に笑顔が増えているようにさえ見えた。たった2、3ヶ月の指導なのに何年もうちにいるようにさえ思う事があった。

 

そして3月8日合格発表の日

歓声が聞こえるキャンパスから電話がかかった。

「監督!〇〇です。合格しました。ありがとうございました。」

はっきり大きな声で言った。父親がすぐに電話を替わって

「今からすぐご挨拶に伺います。」

 

20分ほどでレインボーの自動ドアが開いた。

そして満面笑顔の生徒が入ってきた。

「おめでとう! よかった よかった。」

両肩をしっかりつかんで 

「よく耐えた。よく辛抱した。ここ数ヶ月食べ物の味もわからなかっただろう。」

そう言った瞬間、生徒が泣き崩れた。監督の超高級直輸入カシミアセーターの右肩部がこの娘の涙でびちょびちょになった。

そぱで見ていたお父さんが驚いて身体が揺れた。それに自動ドアが反応して開閉を繰り返しだ。うちの受付も立ったまま茫然と見ているだけだった。

あいつは気丈な娘だからあんなに人前で泣いた事は初めてだったと思う。


だから、何も言わずただ両肩を引き寄せてそのまま泣き止むのを待った。


緊張が解けた瞬間の、まさに自分へのご褒美の涙に違いなかった。


                                  監督