全国平均さえ届いていないのに髙2の段階で100人以上が国公立を希望する高校があるという。3年になっても一流大学名を模試で書き続けE判定をため込む。6月が終わる頃やっと部活を引退してもこれといった受験対策も持てず、学校の特講に申し込むだけ。挙げ句に夏休みには「どうせ家にいても勉強しないから」という理由で自習をするために合宿に向かう。そして落ち葉舞う秋、E判定が30個を超え、それでもなお同じ大学を希望し続ける。
そんな高校に人柄はいいけれどお勉強がダメな男子とそのやさしさに魅かれたのだろうか、結構かわいくて頭のいい女子がいた。先月受けた全統マークは相変わらずE判定まみれで、さすがにがっくりきている男子に女子は銭淵公園で夕焼けを見ながら包み込むように語りかけた。
1度だけなら 許してあげる
行きたいでしょうよ あの大学に
騙されましょう
もう少しだけ
好きなあなたのその夢に
1度だけなら 忘れてあげる
ほんの気まぐれで書いた大学名でも
辛いでしょうよ この判定じゃ
夢が壊れたあなたの心
知らなかったことにしてあげる
1度だけなら 夢見てあげる
たとえ春に泣こうとも
酔いしれましょう 今宵また
好きなあなたの気まぐれに
なんと優しい女子なんだろう! 男子はこれを聞いて下を向いてしまった。
もうすぐ別れがやってくるのだろうか・・・
監督

