2人は蔦屋の向かいにあるマックにいた。
注文は長高女子がしてくれた。
「これでいい?」
「う・・うん」
レジで機械みたいに応対する店員が「お会計は・・・」といいながら、支払いが別々なのかどうか気にしている。
女子「今日・・あたしが誘ったからごちそうするね!」
男子は少し慌てた。「いい・・いい・・・いいよ 悪いから。」
押されっぱなしのこの六高男子は、ここで粋なセリフを吐いたんだ。
「おれ、小銭が欲しいから・・・・」
そういって定期入れから四分の一に折りたたんでいたくしゃくしゃの5千円札を出した。
長高女子もわきまえていた。何も言わずすっと下がって男子を一人にしてやった。
そしてお釣りをもらって月見バーガー2つとシェイク2個を受け取り振り返った六高男子に素早く体を寄せる。
そして横顔を見つめながら
「ありがとう!」
男子は何も言わなかったけれどすこしはにかみながら笑顔を返した。
やるじゃないか!六高男子
男子は達成感のようなものを感じた。
女子の笑顔が自然だった。男子の目は澄んでいた。
素敵なカップルを微笑みが包む・・・・
男子は千円札と小銭のお釣りをポケットに慌ててしまった時、また薬指がハンカチにふれた。
「今日このハンカチをこの子に絶対見せない。見せなくてももう十分自分の気持ちは伝わってる!」そう確信した。
六高祭の日、たこ焼きソースで汚れた長高女子の袖をふいてもらおうと思わず差し出したくしゃくしゃのハンカチ。すべてはそこから始まったんだ。長高女子のお礼のカードに書いてあった通り、
「ハンカチの縁」が「ハンカチックな恋」になった瞬間だった!
心の中でもうひとつ叫んでいた。
「母ちゃん ありがとう。万が一の時にと高校入学の日に持たせてくれた5千円札がホームランを打ってくれたよ!。」
素敵な高校生カップルは六日町インターに往き来する車を見つめながら、夕暮れまで話し込んでいた。
監督