恋の始まり

 

下り電車がもうすぐ着く。

駅の改札のところで六高生とは反対方向に進んでくる私服の君を待つのが好きだった。

「改札の前にいるよ!」とテキストをうつと 

「今ついたよ! 💛」と返信が来る。

             

 

あれは丁度1年前。

文化祭で君が僕のクラスの模擬店に来た日だった。たこ焼きのソースが多すぎて君の紫陽花(あじさい)色のシャツの袖にかかった。僕はまずいと思ってくしゃくしゃだったけれどハンカチを差し出した。どこの高校かわからないし、中学も違うから君が長高の生徒だとは思いもしなかった。

 

君は「ありがとうございます。でも悪いからいいよ。」と言ってティッシュをだそうとした。

僕はハンカチを君の手に強く押し付けた。きっとあわてていて君の顔も服装も見る余裕さえなかった。

君はもう1度「ありがとう。」と言って「これもらっていい?」と聞いた。

その時君の笑顔と白い歯が僕の心に飛び込んだ。

「どこかに捨ててください。」

それだけ言うのが精一杯の僕だった。

 

1か月後の10月8日 同じクラスの女子から

「覚えている! これ、この前○✕君がハンカチ渡したあの娘から。私と一緒で塩中なの。ダントツTOPで長高に行った。これ渡してって。」

もらった封筒は少し厚みがあった。

 

家に帰って封筒を開け中からハンカチだけ取り出すとうちの家で使うソフトナーとは違ういい香りがした。

きっとあの日、あの子はすぐに僕のハンカチをトイレで水洗いして、うちに帰ってから洗濯したのだ。「そうでないとこんなにきれいにオタフクのタコ焼きソースがおちるなるかずはない。」ハンカチをみせたら母親がそう言った。その瞬間、封筒の中身を覗き込もうとしたけれど、がっちりブロックして母親とバスケットのディフェンス状態になった。僕はすぐにその場から退場した。

 

自分の部屋に戻ってベットの上で封筒をのぞき込んだ。中には薄紫色のカードが入っていた。たった2行でこう書いてあった。

「この間はありがとう。

思いがけないハンカチの縁に少し驚いています!」

そしてアドレスと名前が添えてあった。

 

びっくりした。僕にもこんなことが起こるんだ。

あの子が言う通りこれはまさにハンカチの縁かもしれない。

そして僕はその夜、彼女のアドレスに返信をした。

 

 

ハンカチックな恋の始まりだった

 

 

 

 

     ハンカチックな恋////To be continued                                                                                    レインボーランゲージハウス