うちのばあちゃんによく似た非常勤講師の抑揚のない古典の授業は退屈すぎて誰も聴いていなかった。その日は朝から眠くて仕方がなかった。何気なく春の陽差しにほだされて窓に目をやった。青空に広がるポプラの緑と少し控えめに咲く校庭のたんぽぽ、そしてそのど真ん中に隣に座る君がいた。
机の前方に迫り出すように置いた明快古典文法をパラパラとめくりながらノートを熱心につけていく君、抑揚のない棒読みのような授業、一瞬、音が消え不思議な静寂の中でただ君にみとれている僕が窓に映っていた。春陽に映えるグラウンドを背景に君の横顔が輝いている。数秒後、窓ガラスに映る自分と目があってハッと我に返った。
君はまっすぐに黒板を見つめたままその横顔を知る術もない。もちろん僕の気持ちも・・・

