監督の息子はかれこれ10年アメリカ暮らしだ。

帰ってきたらいつもマッサージをしてくれる。右手、左手、そして肩から腰の順に。「膝が痛いとか」、どこか調子が悪いと言うと必ず、帰国の日、成田空港で別れるとき

「必ず医者に行ってください。」と言い残す。

 

そういえば監督も東京で勤めていた20代のころ、盆と正月には必ず帰省した。

母が毎晩料理を作ってくれて、父とは、ガレージに作った壁いっぱいの棚に準備したありとあらゆるお酒を飲んだ。いつも2泊しかいられなかったが、食べて飲んでそして話し込んだ。それから父にマッサージをした。

父の肩は凝り固まってカチコチだったが、いつも息子(監督)の手をもって

「ありがとう。ようなった。効いたわ。」と言って5分とさせなかった。

「もったいない」とまで言ったこともあった。

 

健康な人だったが無理がたたって最後は健康を崩したが、医者に絶対といっていいほど行かない人だった。

「お父さん、見てもらったほうがいいからいってよ。」

「万一のことがあったらどうすると思うと中々いけんのや。お前にお母さん、そしてうちの会社もな、ワシが頑張らなあかんのんや。ありがとうな。」 

父はそう言ってお酒を注いでくれた。 

 

父と子、お互いを思い、たとえ離れて暮らしていても、今日もともに生きる。

監督が父を思ったように数万マイル離れた異国で暮らす息子もそうおもっているに違いない。

 

                                                       監督

 

 

 

     

 思えばお前とは一杯話をしてきたよなあ