初雪だった。 生物の授業はいつも居眠りだけれど雪にほだされて窓の外に目をやった。隣に座る君の横顔、その向こうで舞う雪が 窓に当たっては消えていく。
まるで君に「ねえ、ねえ、ねえ、 こっち! こっち!」と声をかけているようだった。
僕は外を見るふりをして君の横顔に見とれていた。
ガラスに映る自分と目が合ってハッと我に返る。
人は自分の横顔を見ることはない。 君の横顔を世界でだれよりもまじかで見つめる僕が
そこにいた。
君は知らんふりで黒板を一直線に見つめる。
君が万が一こっちをふり向いたらどうしよう。
すぐ目をそらすかなあ。
それとも雪を見ているふりをするだろうか。
今日こそはしっかり君を見つめていよう。
君はいつものように「なあに?」と言わんばかりの目をしてから
微笑んでくれるだろう。きっと・・・
監督

