6歳くらいの頃、車に乗っていた息子が監督にこういった。

「パパ、この曲ばっかりこんなに何回も聞いてて飽きないの?」

監督は答えた。

「そうね こればっかりだねえ もう何日くらい聞いているかなあ?」

「すごい聞いているよ 昨日も一昨日もこればっかりだよ」

その時は鳥羽一郎の「海峡の春」という歌を連続で何百回と聞いていた。

気に入った曲を飽きるまでとことん聞き続けるんだ。 いつもそうだ。

うちの息子は一言も文句を言わず一緒に聞いてくれた。

その息子は今アメリカのジェイコブス音楽院でチェロをメジャーにしている。 世界中から集う音楽家の卵たちは、ほぼ全員が3歳から楽器を始め家庭教師がつくような環境でそだってきた。息子が何とか恥をかかないレベルでしのいでいる理由は、ヤマハ音楽教室と監督の聞かせた演歌のおかげだ固く信じて少し疑っている。

そういったら息子は笑って「はいはい」といった。

 

息子よ!

お前がもしアメリカで有名になったら、ステージにパパを呼んでおくれ。

お前の伴奏で演歌を歌おう。 

そういえば大学3年のときスタンフォード大学で留学生の歓迎会かなんかで演歌を歌ったことがある。アメリカ人の学生だけでなく日本人の留学生たちまでがあきれてシーンとなった。だから1番だけ歌ってやめた。元気だけが取り柄の大学生だった。

                                                      監督