ある生徒のことで監督は怒りの最上級になっている。その怒りを当事者にぶつけると受験がめちゃくちゃになっってかわいそうだから、この怒りを他の事にぶつけている。

 

今朝はガラスを36枚割り、瓦を77枚叩き割った。分厚い電話帳を3冊真っ二つに引きちぎり、食パンを1枚バターもジャムもつけずに丸ごと口に詰め込んで3回かんで飲み込んだ。それでも怒りは収まらないから山の中に入っていってそのバカの名前を大声で呼んでから「愚かもの。馬鹿かお前は。 なめんのもええかんげんえせえよ!」と叫んでみた。ところがどうだ。怒りがおさまるどころかどんどんもえたぎって益々増幅されもう天空まで黒い雲が閃光とともに上っていくようなとどめない雰囲気になってきた。

監督は自分が怖くなってきた。

「どうしよう。どうしたらこの怒りがおさまるのだろうか・・・」

山で怒鳴り散らしたかえりの車でCDからカッシーニの「アベマリア」が聞こえてきた。何を言っているのかわからないし、監督はキリスト教信者でもなんでもない。ただその美しい音色と素晴らしソプラノに聞き入ってしまった。20回以上リピートした。

するとあら不思議???聞くごとに怒りが収まっていく。優しい気もちになって気が付くと車を止めて手をあわせてお空を見上げていた。まるで神に抱かれた善良なる羊ちゃんの気分。

「もう全てを許そう。何もかも受け入れてあげよう。」まさに神の啓示だ!

そしてよだれをふいてしばらく車をとめたまま目を閉じていた。どれくらい静かな時がながれたことだろうか。覚えていない。数時間は立っていただろう。再び目を開けた時、監督の気持ちは固まっていた。「すべてを受け入れなさい。そして自分の気持ちに素直になりなさい。神はすべてを許すであろうぞ。」そう聞こえてくるのだ。そこで監督の答えは出た!

 

「ふざけんじゃないぞ 今すぐレインボーをやめろ うちはコンビニエンスストアじゃないんだ。今後レインボー六日町校の半径5キロ以内に絶対近づくんじゃない いいな 絶対だぞ 」

清々しい気持ちになった。

                                                      監督