監督の息子はもう8年もアメリカ暮らしだ。お互いめったに会えない。

その息子は帰ってきたらいつも毎晩、マッサージをしてくれる。右手、左手、そして肩から腰の順に。「膝が痛いとか」、どこか調子が悪いと言うと心配そうに聞いている。

そして帰国の直前、

「必ず医者に行ってください。」と言い残す。

 

そういえば監督も東京に勤めていた20代のころ、年2回姫路に帰省していた。

帰ると母が毎晩料理をいっぱい作ってくれて、父とはガレージに作った壁いっぱいの棚に準備したありとあらゆるお酒を2人で飲んだ。いつも3日しかいられなかったが、いっぱい食べて飲んでそして話し込んだ。それから父にマッサージをした。

父の肩は凝り固まってカチコチだったが、いつも監督の手をもって

「ありがとう。ようなった。効いたわ。」と言って5分とさせなかった。

健康な人だったが無理がたたって後半いろいろ健康を崩したが、医者に絶対といっていいほど行かない人だった。

「お父さん、見てもらったほうがいいからいってよ。」と何度もいった。

「万一のことがあったらどうすると思うと中々いけんのや。お前にお母さん、そしてうちの会社もな、ワシが頑張らなあかんのんや。ありがとうな。」と父はそう言ってお酒を注いでくれた。 

 

父と子、お互いを思い、たとえ離れて暮らしていても、今日もともに生きている。

                                                       監督