もしもドライブスルーの塾があったら

道路沿いに派手な電飾看板が点滅している。TVでおなじみのマーク。
ファースフードと同じノリでこのところ17号線上に急速に出店が増えている。手続きが早くて便利そうだ。
駐車場をおおきく回るようにしてドライブスルーのラインに車をつける。結構車が並んでいが中には親と生徒一人だから、待たなくても済みそう・・

スピーカー「いっらしゃいませ 大学受験生ですか?」
お客   「はい」
スピーカー「ありがとうございます!」
スピーカー「どちらの高校ですか?」
お客   「△高です」
スピーカー「名門のほうですか 迷門のほうですか?」
お客   「名門のほうです!」
スピーカー「確認のため学生証を下の方にあるトレーに入れてください。」
      ガチャン・・ピーピー…シュ・ーガチャン
スピーカー「ありがとうございます。確認中です。あなたは名門ではなく迷門のほうですね」 
お客   「・・・・・・いや・・進学校の名門の△高です!」
スピーカー「お客様、質問には正確に答えてください!」
お客   「は・・はい。普通高の△高です。」
スピーカー「確認できました。それでは次の質問にすすめます。」
     「希望大学と学部を登録します。」
お客   「△○大學○△学部です。」
スピーカー「お客様。すみません。よく聞き取れませんでした。恐れ入ります。もう1度大きな声で言ってください。」
お客   「△○大學○△学部です!」
スピーカー「お客様、質問には見栄をはらずに正直にお答えください。」
お客   「?????」
スピーカー「お客様、こちらにお越しになる前に熱を測られましたか?
お客   「いいえ」
スピーカー「体温計をトレイにいまいれましたので今すぐ測って下さい。」
お客   「は・・・・・はい。」
      ピーピーピー
お客   「36.4度です」
スーカー 「平熱ですねえ・・・それではもう1度確認しますが志望校は国立✕○大学で間違いございませんね。」
お客   「はい!何回も言わせないでくださいよ。」
スピーカー「失礼いたしました。希ゃ望校が一流難関校なのでお熱でもあるのかと思いまして・・・」
     「それでは直近の模試結果をお見せください。」
     トレイの開く音
お客   「入れました。」
スピーカー「今確認しております。」
     「恐れ入りますが他の模試結果をおもちではないですか」
お客   「え? 2月のベネベネ模試ではだめですか?」
スピーカー「だめです!」
お客   「なぜだめなのですか 判定結果もでていますけれど」
スピーカー「ベネベネは多くの下位高校も受けているので当社では参考に
      しておりません。特に数学は問題が簡単な傾向にあり国立大学
      希望者には参考になりません。3月実施の東大記述模試や四谷
      や仙台模試のデータをお見せください。」

車の中の親子の会話

母     「もってきてないの? その代々木とかとか駿台のデータ?」
子供    「代々木じゃないよ。四谷!駿台じゃくて仙台だよ。
       そもそも△高の2年はベロベロ以外学校で受けてねーもん」
スピーカー 「ございませんか?」
お客    「ありません。3年になれば受けると思います。たぶん・・」
スピーカー 「わかりました。それでは次の質問にすすめます。私立を併願
       しますか?」

突然母親が答える「うちはお金に余裕がなにので私立は受けません。」
スピーカー「恐れ入ります。オタクがお金もちか貧乏かを聞いているのでは
      ありません。受験の併願の可否をきいているのです。」
お客   「併願しません」
スピーカー「わかりました。国立単願コース内容の全リストのはいった登録フォームをお渡しします。そこにあるあなたのIDをWEB画面でインプットされ24時間以内に申込手続きを済ませてください。折り返しコースとそのスケジュール並びに料金をメールでおしらせします。模試データが出ていないためコースは錬成コースではなく基礎メイビーコースから選んでください。」

ドライブスルーを出た後の親子の会話
母親   「なんか後味悪いわね。顔を見ないでやるからあんなこと平気で
      いううのよ。体温までは測らされて信じられないわ??」
息子   「別にいいじゃん。」
母親   「あの国立単願の基礎メイビーコースってなに?変な名前ね。」
息子   「メイビーって英語かなあ??」

注釈 「国立単願 基礎メイビーコース」とは maybe「ひょっとして」受かるかもという意味である。

                             監督