テーブルの上にはカップが2つ。朝慌てて飛び出したのでホットチョコレートを飲んだままだ。

エステルが持ってきたポットにはまだ温かいチョコレートが残っている。

返さなきゃな。

ホットチョコレートをカップにあけて飲み干す。甘いけれどほろ苦い。

この飲み物を作るときエステルは何を思っていたのだろう。俺と飲もうと胸を躍らせていたのか?こんな俺のどこが気に入ったのだろう。

 

俺といてもすぐ数年後に辛い思いをするのは目に見えている。エステルには幸せになってほしい。あのはじけるような笑顔はもっと若くて長く共にいられる男に向けてほしい。

俺は兄のような父のような存在でいさせてくれれば満足だ。

 

満足?本心からそう思うか?

 

港の階段の上にいたエステルを初めて見たとき、天使のようだった。

くるくる変わる表情。飛び跳ねるような軽い足取り。

何より話していて楽しい。

あの無邪気な無鉄砲さが こののち何か困難を招くことがあれば

力になり護ってやりたい。

だが俺には若さも力もない。

 

彼女がさっき見せた真剣な眼差しと涙を思う。俺がもう少し若ければ抱きしめていただろう。そして、決して離しはしない。

認めざるを得ない。彼女を愛し始めている。

 

なぜ今、この歳になってから出会ったのだろう。シズニの神は試練をお与えになろうとしているのか?

年齢だけはどうしようもない。まだ出会って3日目だが、こんなに心が乱れることになるとは。

 

気持ちを落ち着かせようと外に出た。心を静められるのは神殿だがあそこはエステルがいるかもしれない。

 

行く当てもないまま農場の片隅でハーブをむしっていると

「ブレソールさんですね。」

若い男性に声をかけられた。