執筆者MTさん

 

はっ!

 

ラスコーリニコフは汗だくで目を覚ました。

見渡すと棺桶のような狭苦しい、自分の屋根裏部屋だった。

まさか、あの殺人は夢だったのか?

 

その瞬間、扉をたたく音がした。

 

「誰だ!?」

半ばパニックになりながら、彼は答えた。

あろうことに扉は施錠されていなかった。

 

半ば強引に、禿げあがった額の酔っ払いが入ってきた。

「私ですよ、ほら昨晩ご一緒させていただいた…。

娘に売春させて、酒を飲んでたって言えばわかりますか?

マルメラードフですよ。」

 

ラスコーリニコフは起き上がると、気だるそうに男を見つめた。

50代のその男が喋るのに任せた。

 

「実はね、あなたにお願いしたいことがあるんですよ。

もちろん、タダではお願いしません。そんな男に見えますか?

酒だって、盗まずに、娘のストッキングを売って払ったでしょう?」

 

すると、男は大きく膨らんだコートから、

きんちゃく袋を取り出して、中身をぶちまけた。

見覚えのある宝石たちだった。

 

ラスコーリニコフの表情はこわばった。

それは老婆を殺したとき、わしづかみにした盗品だった。

無意識に自分のポケットをまさぐった。

 

「私ね、昨夜あなたが駆けていくのを見たんです。

これをポタポタ落としながらね。

つまり、これはあなたのものっていうんですか?

それとも、拾った私のものでしょうか?

私はその宝石を逆向きに数えていったんですよ…

そういう意味では、あの方のもの?」

 

「何ですか!!あなたの目的は何なんですか?!」

これまで喋らなかったラスコーリニコフは怒りに任せてまくしたてた。

 

「これで、お願い事に耳を貸すくらいはしてくれますね?」