「ボウリングが上達した」——そう確信していた。だが、それは完全なる思い違いであった。
事の発端は、昨年のクリスマス。私は念願のVRゴーグルをプレゼントとして手に入れた。さっそく興味本位で「VRボウリング」のアプリケーションをインストールし、プレイを開始。仮想空間とはいえ、その臨場感は驚くほどにリアルであり、ボールの質感こそ再現されていないものの、投球動作やレーンの空気感は、まさに実物そのものであった。
日々のトレーニングの成果もあり、私のスコアはみるみるうちに向上。ついには250点を超える域にまで達した。思えば実際のボウリングを体験したのは5年ほど前。そのときの最高スコアはせいぜい150点。私は己の成長を疑わなかった。何より、屋内で適度な運動ができるVRボウリングに、私は大いなる満足感を覚えていたのである。
そんな折、友人たちとボウリングに行く機会が訪れた。私は満面の自信をたたえてレーンに立った。ところが、現実のボールを手に取ったその瞬間、衝撃が走った。「重い」。たった11ポンド。成人であれば問題なく扱えるはずの重さが、VR空間に慣れ切った私には、鉄球のように感じられた。
しかし私はまだ楽観していた。投球フォームは日々VRで磨き上げたはず。きっと問題はない——そう思って投じた第一球は、驚くほど遅く、そして無残にもレーンの端へと吸い込まれ、ガーターとなった。
「おかしい……」何度投げても、ボールはスピードを欠き、カーブも思うようにかからない。結果、スコアはまさかの70点。自他ともに認める“最低記録”である。
この日のボウリングを、仲間たちは存分に楽しんでいた。しかし私の心には、仮想と現実のあまりにも大きな隔たりが重くのしかかった。私は静かに、そして深く打ちのめされていた。
その夜、私は決意した。「もう、VRボウリングはしない」。
だが、好奇心というものはなかなかにしぶとい。次に手を伸ばしたのは「VR卓球」である。果たしてこちらは、仮想と現実をどこまで橋渡しできるのか——。