一昨年の夏、思い立って簿記二級の通信教育を受講した。
半年間のカリキュラムだったが、正直なところ、その時点では内容を深く理解していたとは言いがたい。課題提出のために最低限の知識をかき集め、なんとか形にして乗り切った。少しばかり“ごまかし気味”ではあったが、とにかく修了証は手に入れた。
「本気を出すのはここからだ」と思い、CBT方式での受験を決意し、8月に申し込んだ。
しかし、試験日が近づくにつれて自信が持てなくなっていく。
少しずつ勉強はしていたものの、知識が頭の中でうまく整理されず、理解が定着しない。
CBT試験は日程変更が可能だったため、8月の受験を10月に、10月を12月に、そして1月、最終的には3月へと、気づけば何度も先延ばしにしていた。
ところが、3月以降にはもう試験日を延期できない。逃げ道がなくなったところで、ようやく本腰を入れて勉強に取り組むようになった。
模擬試験の結果は芳しくなく、8回のうち7回は合格ラインに届かず、「これはもう一度受け直すことになるかもしれない」と思わざるを得なかった。
とはいえ、できることはすべてやろうと気持ちを切り替え、試験当日を迎えた。
その朝、コンビニで大福をひとつ買った。
「大きな福」と書いて大福。験担ぎと言えばそれまでだが、不思議と心が落ち着いた。
春らしい陽気に背中を押されたような、そんな気分だった。
本番の試験問題は、模試ほどの難易度ではなく、落ち着いて解くことができた。
最後の見直しで、ケアレスミスにも気づくことができた。
結果は——無事、合格。
あれほど不安だったのが嘘のように、結果は余裕の点数だった。
長かった道のりだったが、振り返れば必要な時間でもあったように思う。
春一番とともに届いた、合格通知。
大福の力か、春の風か。
とにかく、嬉しい春の始まりとなった。