ｱﾙｺｰﾙ依存症の概要をまとめてみた
病院や施設で学んだ事をまとめてみました。
※3年前にまとめた記事です。
①アルコール依存症の定義
酒を飲まずにはいられなくなってしまう病気
＜原因＞
長期にわたる大量飲酒
＜作用＞
アルコールが中枢神経に作用し、頭の中に酒を飲まずにはいられなくなるプログラムを作る
＜結果＞
(a)飲酒のコントロール喪失
(b)飲酒パターンの変化
(c)アルコール離脱症状の出現
＜特徴＞
断酒期間があっても、何かのきっかけで、一旦お酒が入ってしまうと、脳のプログラムにより大量飲酒に戻ってしまう
※断酒し続ける以外には、回復の道はない
＜問題・影響＞
■患者個人の問題
┗身体症状と精神症状
■家族への影響
┣夫婦関係の悪化
┣子供への影響
┗家庭崩壊
■社会への影響
┣職場の生産性の問題
┗生活保護の問題
②アルコール依存症の過程
■第１期 初回飲酒から習慣的飲酒へ
・アルコールへの精神的依存の始まり
・身体的なアルコール耐性の増大
・飲酒量の増加
■第２期 異常飲酒行動
・孤独飲酒や隠れ飲み
・酒へのこだわりや貪欲飲酒
・罪の意識の芽生え
・ブラックアウト
■第３期 身体的依存と離脱症状
・飲酒することへの正当化や言い訳
・アルコール離脱症状や内臓疾患
・連続飲酒と山型飲酒サイクル
・アルコール抑制力の喪失
■第４期 末期症状から＜死＞
・アルコール離脱症状への脅威から、朝酒など常に酩酊状態
・記憶力、集中力などに障害
・自己や周囲への環境破壊
・＜死＞
③アルコール離脱症状・内疾患
＜身体的依存に伴うアルコール離脱症状＞
■小離脱症状
発汗、嘔吐、振戦、動悸、不安、不眠※1抗うつ等
■大離脱症状
幻覚などの※2せん妄
痙攣を伴う意識喪失発作
＜アルコール依存に伴う身体合併衣装症状＞
(a)神経への影響
・アルコール性認知症(痴呆)
※3アルコール性小脳失調
・中継神経症状
・アルコール性多発性神経炎※4ウェルニッケ コルサコフ脳症
(b)循環器への影響
・アルコール性心筋症
自律神経障害
(c)胃腸への影響
・食道炎・胃炎
・食道静脈瘤
・食道がん
※5ロー ワイス症候群
(d)肝臓への影響
・脂肪肝・アルコール性肝炎
・肝繊維症
・肝硬変→肝がん
(e)すい臓への影響
・すい炎・すい管の拡張
・すい臓の壊死
(f)その他の影響
※6アルコール性ミオパチー
※7大腿骨頭壊死・糖尿病
④アルコール依存による社会生活上の障害
(a)職業生活での問題・障害
遅刻、欠勤、降格、単純労務化、失職、労働災害、転職など
(b)家庭生活での問題・障害
夫婦喧嘩、家庭内離婚、別居、離婚、子どもの登校拒否、非行、家出、ACOA(Adult Child Of Alcoholic)→アルコール依存症の親を持った子どもの精神発達問題
(c)地域生活その他の問題・障害
路上で大声でわめく、飲み屋で暴れるなど→地域におけるアルコール依存症者家庭の孤立化
⑤アルコール依存症の段階別治療目標
(a)早期治療を促すため、治療への導入
(b)治療開始のための第１条件である断酒と、断酒によって起こるアルコール離脱症状の治療
(c)身体合併疾患や精神疾患の治療
(d)断酒への動機づけと再発防止
(e) 家族関係の改善及び、社会復帰のための相談援助
⑥アルコール依存症から回復状態の目安
(a)慢性離脱症状の軽快
(b)身体合併症の治療、または軽快
(c)家族関係の健全化
(d)自助グループへの定着
(e) 職場への定着
※昔は底付き体験を待っていましたが、最近では底付きの前に「動機付け面接」で治療意欲を引き出す形がとられているようです。
アルコール関連用語集
※抗うつ
気分がふさいで晴れ晴れしない状態
※せん妄
突然発症する興奮、妄想、幻覚、集中力低下などの精神状態の異常
※アルコール性小脳失調
１ヶ月以上大量飲酒をすると両足のバランスが取れなくなり、フラフラとして歩行困難になる症状
※ウェルニッケ・コルサコフ脳症
ビタミンB１の欠乏による脳病であり、ウェルニッケ脳症は、①眼球運動障害②運動失調③意識障害といった症状が現れる
コルサコフ脳症は、ウェルニッケ脳症が慢性化したもので①記銘力障害②見当識障害③作話などが中心症状である
※マロリーワイス症候群
飲酒後、繰り返して嘔吐、出血し、検査で胃に縦走潰瘍が認められる状態
※アルコール性ミオパチー
筋肉痛や筋のけいれん、筋力低下などの症状が出る病気で、しばしば急性腎不全を起こす
※大腿骨頭壊死
大腿骨の骨頭が血行障害を起こし、骨頭の骨組織が死んでしまう疾患
ｺｰﾋｰもﾀﾊﾞｺも酒も薬も依存症になります。