3月30日(日本時間31日)
T-モバイル・アリーナ:米ネバダ州ラスベガス
◇WBO世界スーパーウェルター級タイトルマッチ&WBC同級王座決定戦◇
WBO王者
ティム・チュー
(29=豪:24戦全勝17KO)
vs
挑戦者WBC3位/元WBC暫定王者
セバスチャン〝タワーリング・インフェルノ〟フンドラ
(26=米:20勝13KO1敗1分)
[本来のカードはチューvs元WBA&WBCウェルター級王者 キース・サーマン(米)の155ポンド契約ノンタイトル12回戦だったものの、サーマンの負傷で変更]
チューは、昨年10月にブライアン・メンドサ(米)に判定勝ちして以来となるWBOタイトル3度目の防衛戦で、勝てばWBC王座も手に入れ2冠王者となる試合。
スーパーウェルター級(約69.85キロ)にして規格外の197センチの身長を持つフンドラは昨年4月、メンドサに7ラウンドKO負けを喫してWBC暫定王座から陥落&初黒星、今回はそこからの再起戦で、勝てば一気にベルト2本を獲得できるリング。
世界戦が5つ組み込まれる豪華興行のメインで行われた一戦…
結果は フンドラが 2-1(116-112、115-113、112-116)の判定勝ちで新王者。
[動画サイトでフルラウンド映像を見つけて観戦]
長身&ロングリーチ&サウスポーのフンドラがジャブで牽制し、距離を詰めたいチューがタイミングを計って接近し、右ストレートを好打する立ち上がりで試合スタート。
2ラウンド、偶然フンドラの肘が当たってチューが前頭部をカットし大量に出血、フンドラも鼻血を流し、序盤から流血戦の様相に。
チューの負傷箇所は額より上の髪の中ながら、出血の量が多いため顔面は真っ赤に染まり、表情には焦りの色。
テクニカルドローや負傷判定の可能性も高い状況だけに、早期決着を見据えて積極的に出たい筈のチュー、しかし流血が視界を塞ぐのか逆に手数が落ち、淡々とジャブを突いてペースを保つフンドラがやんわりと主導権を手繰り寄せる流れ。
3ラウンドに続き7ラウンド開始前に再びドクターチェック、続行となるも余裕のないチューは戦術の組み立てを省いた一発狙いに偏り、冷静にペースを維持するフンドラが手数&正確さでリード。
終盤、何とか流れを変えて有効打を決めたいチューが、コンビネーションというよりは単発打を繋ぎ合わせる感じで前進し、最終ラウンドはフンドラも打ち合いに応じてオーバーヒートしかけたところで試合終了のゴング。
フンドラがジャブ&自分の距離キープに徹し、痛烈KO負けからの再起戦で2冠を獲得、一方のチューは予想外のアクシデントで本来のボクシングが出来ず、思いがけない初黒星で王座から陥落。
ここ最近では見た記憶がないレベルの大流血だったチューは、そのトラブルで自己スタイルを乱したことが一番の敗因と映りましたが…
フンドラの方も、痛い目に遭ったメンドサ戦まではたびたび見られた打ち合いに行きたがる部分をキッチリ制御し、勝ちに徹する戦術で接戦をモノにした形。
基本的な能力の高さを改めて証明し、予想外に早くフンドラ塔を再建した格好ですが、とはいえ規格外サイズを活かし切れているとまでは思えず、この試合もチューのパンチが常に当たるくらいの距離間での攻防。
一発まともにもらって倒されるリスクと背中合わせ、なイメージ自体は変わりなしという感じですけど、それはそれとして、フンドラvsチューは是非リマッチを期待したいところ。
ついでながら、個人的な採点は116ー112フンドラで、少なくともチューの勝ちはないんじゃ… という印象でした。
◇WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ◇
王者
ローランド・ロメロ
(28=米:15勝13KO1敗)
vs
挑戦者2位
イサック〝ピットブル〟クルス
(25=メキシコ:25勝17KO2敗1分)
昨年5月、イスマエル・バロッソ(ベネズエラ)との決定戦に9ラウンドTKO勝ちして空位のWBA王座を獲得したロメロは、次戦で義務付けられていたオハラ・デービス(英)との指名戦を怪我を理由に行わず、休養王者にスライド降格されるなどの紆余曲折を経ての初防衛戦。
21年12月の世界初挑戦でWBAライト級レギュラー王者 ジェルボンテ〝タンク〟デービス(米)を相手にフルラウンド戦い善戦したクルスは、判定勝ちした昨年7月のvsジョバニ・カブレラ(米)以来のリングで、1階級上げて2度目の世界タイトル挑戦。
豪華イベントのセミファイナルで行われた一戦…
結果は クルスが 8ラウンド 0:56 TKO勝ちで新王者。
初回、ガードを固めてジワジワにじり寄るクルスが残り1分ちょっとの所で左フックをヒット、相手の動きが止まったところにすかさず連打を見舞うと、足にきてフラついたロメロはダウン寸前のピンチ。
2ラウンドからロメロは距離をとってジャブ&サークリング、クルスの圧力をかわそうとするも思うようにはいかず、ジリジリと出るピットブルが優位に。
ガンガン行くというほどではないものの、クルスは左右フックを上下に打ち分けて流れを掴み、逆に徐々に苦しい展開となったロメロは5ラウンドにホールディングで減点1。
7ラウンド終盤、クルスが左フックからの追撃を決めるとロメロが大きくヨロけ、再びダウン寸前のピンチ。
迎えた8ラウンド、ダメージの深いロメロにフィニッシュ・チャンスを見て取ったクルスがスパート、途中でグローブのテーピングが剥がれて中断となったものの、ロメロがその程度の時間で窮地から脱することなど出来る筈もなく、再開後にピットブルが連打であっさり王者を捕捉。
右フックを受けたロメロの顔が跳ね上げられたところでレフェリーが止め、TKOを宣告して試合終了。
試合前、ロメロに〝チワワ〟と挑発されたクルスは、試合ではその相手を咬み伏せて猛犬ぶりを発揮、今後はWBC同級王者 デビン・ヘイニー(米)との統一戦や、タンクとのリマッチを希望する旨をコメント。
タフで頑丈、パワーもあって手数も出る=誰とやっても好ファイトが期待できるタイプということで、これからに注目しておきたい新王者です。
[同じ興行で行われた他の世界戦、WBA世界ミドル級タイトルマッチ:エリスランディ・ララ vs マイケル・ゼラファ、WBC世界フライ級タイトルマッチ:フリオ・セサール・マルティネス vs アンヘリノ・コルドバ、WBC暫定スーパーウェルター級タイトルマッチ:セルヒイ・ボハチュクvs ブライアン・メンドサ は一緒にすると長文になってしまうため、別に分けて投稿するつもりです]