WBCの「ブリッジャー級」新設について | ボクシング・ダイアローグ

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先頃、WBC(世界ボクシング評議会)がクルーザー級とヘビー級の間に224ポンド(101.6㎏)をリミットとする「ブリッジャー級」を新設することを発表。

 

これに対しては不支持の割合の方が多い?ようながら、しかし全くの愚行と言い切れるものなのか、個人的には少々考える部分がありました。

 

ボクシングの常識的には、軽量級ほど数㎏程度の違いでもパワーや耐久力等にハッキリとした差が出、逆に重いクラスになるほどその傾向はそんなには大きくは現れない、とされていますが・・・

 

しかし重量級の場合でも、200ポンド(90.72㎏)がリミットのクルーザー級と、それと1階級差しかない最重量級のヘビー級(実質的な無差別級)のウェイト差は(勿論、選手各々でかなりの差はありますが)、現実的に相当な開きがあるのが今や当たり前。

 

昔だったら100kgを切るウェイトで戦うヘビー級選手はごく普通で、逆にそれ以上重いと動きが鈍くなり成功できない、みたいな見解が通説のようにあったくらいでしたが、現在は全体的に選手が大型化し、大部分が概ね100kg以上のウェイトで戦っているのが実情です。

 

そのためクルーザー級の選手からすれば、実質のヘビー級とは大雑把に10数㎏、時には20㎏以上も重いクラスということになり、たぶん少々の減量苦がある程度では簡単にヘビー級転級はできないと思われます。

 

また、余分な減量をしてまでクルーザー級に落としたくない、とか、伝統ある最強のヘビー級に拘りたい、などという理由で小型(軽量)=不利を承知でヘビー級で戦っている選手の場合でも、事実上の無差別級ではウェイト幅の広さが不平等に作用し、そのぶん余計に難儀しているのも事実。

 

結果、実力者でありながら体格(ベストウェイト)差が根本的な原因で勝てない試合が多くなり、成功できずに終わってしまう・・・ というケースが容易に考えられ、実際のところそれは過去に相当数あった筈です。

 

そういう訳で、ウェイト差の影響が軽量級ほどハッキリ出ない重量級とはいえど、個人的にはクルーザーとヘビーの大きな開きの部分については前々から引っ掛かりは感じていました。

 

直近の実例だと、先頃行われたアレクサンデル・ウシクvsデレク・チゾラ。

 

クルーザー級時代は無敵だったウシクが、ナチュラルヘビーながらも中堅レベルでしかないチゾラに体格差で圧され、判定勝ちしたもののかなりの苦戦を強いられていました。

 

ただ、とはいえ・・・

 

統括団体が4つ在る以上、そのうちの1つだけが独自に新クラスを増設することについては、やはり賛同は出来かねる、というのが率直な気持ちです。

 

ブリッジャー級に転級する選手がそれなりにいると仮定しても、そのクラスが存在するのがWBCだけとなれば、王者は基本的にランカーとの防衛戦をこなすだけで、より多くの報酬や名声を求めて他団体の王者と統一戦を行うとか、そうした同級内でのビッグマッチ路線は初めからないことになります。

 

勿論、体格的には寧ろブリッジャー級がベストなナチュラルウェイト、という選手もかなりの数で存在する筈にしろ・・・

 

それでも、タイトルを狙えるレベルの選手ほどより多くのチャンスの方を重視するでしょうから、新設クラスに完全移行して腰を落ち着けるケースがどのくらい出て来るのか、そのへんはちょっと予想できません。

 

批判が多い?反面では、新しいタイトルの初代王者を目標に据える、といった価値観やモチベーションもあるでしょうし、ヘビー級では体負けしがちだった選手がとにかく世界チャンピオンになりたい!と1階級下げて参戦するパターンも少なからずありそうな気もしますので、一体どうなることやら。

 

そして更に・・・ WBCのマウリシオ・スライマン会長は、そのクルーザーとヘビーの事実上のウェイトの開きについて一考したようで、ブリッジャー級を定着させていくためにクルーザー級のリミットを190ポンド(86.2㎏)に下げる追加プランを言明しています。

 

その部分、個人的には先述のクルーザー&ヘビー級と同じ理由で、ライトヘビー級(リミット175ポンド=79.38㎏)とクルーザー級の1階級差でも、これまた10kg以上もの差があることに対して前々から疑問を覚えていまして・・・。

 

でも、だからといってスライマン会長のクルーザー級190ポンド案を支持するかと言えば、答えはやはりNoです。

 

繰り返しになりますが、統括団体が4つも存在する前提がある以上は最低限まず足並みを揃え、発表(決定)する前に必要な論議や試験的な実戦等のテストを積み重ねるなどした上で精査し、そうして最終的な判断を下してほしい、と思うので。

 

しかし肝心のスライマン会長は、ブリッジャー級を半年~1年程度で定着させる、と言っているみたいなので・・・

 

だから、やっぱり反対。

 

なお、ブリッジャー級の名称の由来は、ジャーマン・シェパードに襲われかけた妹を守ったアメリカ人のブリッジャー・ウォーカー少年(6歳)に因むそうですが・・・

 

ヘビー級に次ぐ重量級の新クラス名に採択したことの、そのセンスの部分は???かと。

 

6歳の少年といったら体重10数㎏くらい?→これがミニマム級より軽い最軽量級を新設するのなら、体は小さいけれど勇敢!といったイメージで、それなりにナルホド感が得られる気もしますけど・・・。

 

ブリッジャー君がボクシングファンで、自分の名前が新クラス名に採用されたことを喜んでいるなら、それはそれでいいんですけどね。