京極正宗が顕現して、三刻ほどが過ぎた。
縁側。
京極正宗は静かに座っていた。
姿勢はまっすぐ。
背筋は美しく伸びている。
まるで貴族の子息のような気品。
しかし。
その目の前では。
∈(👁️___👁️)∋🍠うぺぺ〜
ナマズオマスクの審神者が、焼き芋を食べていた。
もぐ。
もぐ。
もぐ。
京極正宗は、ゆっくり瞬きをする。
「あるじさま…」
「なんだっぺ?」
「その……」
少し迷いながら聞く。
「そのお顔は……」
「ナマズオ族だっぺ」
即答。
京極正宗は静かに頷いた。
「そうですか」
三秒。
五秒。
十秒。
(ナマズオ族……?)
横で清光が肩を震わせている。
安定は遠くを見ている。
山姥切は何も言わない。
三日月は茶を啜りながら笑っている。
燭台切が京極の前に茶を置く。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
京極正宗は優雅に礼をする。
動作が美しい。
育ちの良さがにじむ。
「こちらの本丸は」
京極は周囲を見渡す。
「とても……自由なのですね」
「そうだな」
薬研が笑う。
「大将がこれだからな」
京極正宗はもう一度、主を見る。
主。
焼き芋。
ナマズオ。
∈(👁️___👁️)∋🍠もぐもぐ
目が合う。
主は、にこっと笑った。
「京極っぺ」
「はい?」
「さつまおいも食うっぺか?」
京極正宗は固まった。
さつまおいも…
薩摩国にあるからさつまおいも?
薩摩の本丸にあるからさつまおいも?
情報が追いつかない。
三日月が楽しそうに言う。
「これは薩摩の本丸の主食でな」
燭台切が頷く。
「美味しいよ」
薬研
「腹にも優しい」
清光
「まあ主は食べすぎるけど」
京極正宗は、少し考えた。
そして。
丁寧に受け取る。
「では……」
小さく一口。
もぐ。
もぐ。
沈黙。
そして。
目が丸くなる。
「……美味しい」
ギョリイが身を乗り出す。
「だっぺぇぇぇ〜??」
「これは」
京極正宗は少し驚いた顔をする。
「とても優しい味です」
燭台切が嬉しそうに笑う。
「よかった」
その時。
畑の方から声。
「主ーーーー!!」
加州清光が叫ぶ。
「いちご無くなってる!!」
沈黙。
全員の視線が主へ。
ギョリイが、ゆっくり目を逸らす。
∈(👁️___👁️)∋ちょっと用事を思い出したぺ…
山姥切が言う。
「主」
低い声。
「説明しろ」
京極正宗は、そっと焼き芋を置いた。
そして静かに呟く。
「……あるじさま」
「なんだっぺ?」
「こちらの本丸」
少し微笑む。
「とても賑やかですね」
三日月が笑う。
「慣れてからも面白いぞ」
京極正宗は思った。
(なるほど)
京極家で秘蔵された刀。
静かな蔵。
礼節。
品格。
それが今。
ナマズオ族の主。
さつまおいも。
京極正宗は小さく笑った。
「悪くありませんね」
その日、薩摩の本丸に新しい短刀が、完全に巻き込まれた。