行光の文を読み終えたあと、主殿にはしばらく静かな空気が流れていた。
遠くの山から吹く春風が障子を揺らし、庭の松がかすかに鳴る。
ギョリイは縁側に座ったまま、文を握りしめていた。

∈(👁️___👁️)∋……行光

胸の奥がきゅっとなる。
修行先で恐怖と向き合おうとしている刀の姿を思うと、どうしても寂しさが込み上げてくる。
しんみりナマズオになったまま、ぼんやりと四畳半の主殿に戻り、座る。そして、テーブルに置かれたナマフォーンへ視線を落とした。
審神者の力で現世のネットに繋がる便利道具である。
画面がぴこん、と光る。LINE通知。

送り主は──

ナマズオテンパード仲間、ギョチンちゃんとギョミヤちゃん。

ギョリイは画面を覗き込んだ。
そして。

∈(👁️___👁️)∋📱な、なぬッッッ!?

次の瞬間、四畳半の主殿のテーブルがバンッと鳴った。
ギョリイは勢いよく立ち上がる。

∈(🔥___🔥)∋ナマズオォォォ!!!

画面には、衝撃の情報が並んでいた。

🐟 潤えナマズ・温感マグカップ
🐟 クガネ温泉名物 ナマズオ饅頭
🐟 クガネ温泉ととのいセット
🐟 ゆるパレット ピンズ  マメット・ナマズオ
🐟 ゆるパレット ころっと マメット・ナマズオ

ナマズオグッズ。
大量発売。

∈(❤️___❤️)∋うぺぇぇぇぇぇ!!

さっきまでのしんみりした空気は、跡形もなく消えた。

∈(👁️___👁️)∋温感マグカップだと……!?
ナマズオ饅頭!? ととのいセット!?!?

ギョリイはナマフォーンを握りしめて部屋の中をぐるぐる回る。

∈(👁️___👁️)∋これは……これは……

真顔になる。

∈(👁️___👁️)∋エオルゼア帰還案件っぺ

その時、襖がすっと開いた。
今日の近侍、水心子正秀である。
主殿で騒ぎが起きれば当然様子を見に来る。

水心子は静かに部屋を見渡した。
机。
文。
ナマフォーン。
そして、ナマズオ大興奮の主。

「……主」

∈(👁️___👁️)∋水心子ッ!!

「はい」

∈(👁️___👁️)∋ナマズオグッズ発売っぺ

水心子は一瞬だけ沈黙した。
それから静かに頷く。

「それは……おめでとうございます」

∈(👁️___👁️)∋買うっぺ

「そうでしょうね」

∈(👁️___👁️)∋全部買うっぺ

「……そうでしょうね」

主殿の外では、春の風が静かに吹いていた。
遠い修行の地で、行光はまだ知らない。

自分の文を読んでしんみりしていた主が、ナマズオグッズ発売で大騒ぎしていることを。

そしてその夜。
薩摩の本丸の刀剣男士たちは、主殿から響く声を聞くことになる。

∈(🔥___🔥)∋ナマズオォォォォ!!

春の本丸は、今日も平和だった。