雨が止んだ午後の本丸。
山姥切国広が帰ってきてから数日が経ち、ギョリイはますます元気になっていた。
「うぺぇぇ〜!まんばっぺおかえり日和っぺぇぇぇぇ!!」
「……毎日言ってるぞ、それ」
穏やかに微笑みながら山姥切国広はギョリイの隣に腰を下ろす。その時、ギョリイの腕に抱かれていたものにふと目がいった。
「……それは?」
「うぺ? ああ、これっぺか?」
ギョリイが嬉しそうに、よく見慣れた姿のぬいぐるみを掲げて見せた。白い布を頭にかぶり、どこか不機嫌そうな表情のそのぬいぐるみ。
「……俺、か?」
「そうっぺぇぇ!!まんばっぺが修行中の間、ずっとオラのそばにいてくれたっぺよ!!」
嬉々として語るギョリイ。
だが――
「ちょぎっぺが作ってくれたっぺ!!」
その一言に山姥切国広の指先がピクリと動いた。
「……本科が?」
「そうっぺぇ!オラがしょんぼりしてたら“俺の写しだ”って言って渡してくれたっぺ!すごいっぺよな〜!」
「……」
静かに山姥切国広はまんばっぺぬいぐるみを見つめる。
布の質感。
縫い目の細やかさ。
細部まで丁寧に“俺”を再現したぬいぐるみ。
ギョリイが、どれほどこのぬいぐるみを大事にしていたか――
それはわかる。
でも。
(本科が作った“俺”を…こいつはずっと……)
心の奥に、小さな棘が刺さる。
「……俺がいない間、それをずっと抱いていたのか」
「うぺぺぺぺ!!朝も夜も一緒だったっぺぇぇ!!雨の日も風の日もっぺな!!」
「……そうか」
ギョリイの笑顔は無垢だった。
だからこそ山姥切国広は、その気持ちに水を差すことはできなかった。
「……悪くない。……似てるし、可愛いな、それ」
そう言ってギョリイの頭をぽんと撫でる。