夕方、いつもの縁側。
ギョリイは、宝物のように抱えたモロコシ様トゥートゥバックを膝の上に乗せていた。
 
「ぬふふふふ……モロコシ様ぁぁ……ぴっかぴかっぺなぁ……最高っぺぇぇ……」
 
うっとり見つめては、バッグの柄に頬をすり寄せる審神者。
けれど、その視線の端――ふと見えたのは。
 
「……」
 
縁側の柱に背を預け、静かに座っている、まんばっぺの姿だった。
 
(……あれ?)
 
いつもより、視線が低い。
声をかけてもこない。
風の音と、ギョリイのモロコシ様トークだけが流れていた。
 
(……元気、ないっぺ?)
 
そっと立ち上がり、バッグを大事に置いて、まんばっぺの隣に座る。
 
「……まんばっぺ」
 
「……ん」
 
「……どしたんだっぺ?」
 
「……」
 
ギョリイの問いに、すぐには返事がなかった。
風がひとつ吹いて、まんばっぺの髪とマスクが揺れる。
 
「オラがモロコシ様バッグでテンション爆上がりしてるから、引いてるっぺ?」
 
「……いや、違う」
 
「じゃあ……なにぺ……?」
 
まんばっぺは、少しだけ俯いた。
そして、ぽつりと――
 
「……俺は、あんたに何もしてやれなかった」
 
「…………うぺ?」
 
「一緒に並んで……そばにいたのに……あんたが一番欲しかったものを手に入れさせてやれなかった」
 
「……」
 
「笑ってるあんたを見て俺も嬉しいはずなのに……なのに……なんか、悔しかった。変だろ」
 
そう言って、まんばっぺは顔をそらした。
ギョリイは、そっと、まんばっぺの袖をつまんだ。
 
「……まんばっぺ」
 
「……」
 
「じゃあ、聞くっぺな。あの列に並んでる間、オラの隣にいたのは誰ぺ?」
 
「……俺」
 
「じゃあ、オラが崩れ落ちたとき、支えてくれたのは誰ぺ?」
 
「……俺」
 
「じゃあ、オラが復活したとき、すぐ横で黙って見守ってくれてたのは誰ぺ?」
 
「……俺」
 
「……じゃあ、ぜ〜んぶしてくれてるっぺな!オラのためにぜ〜んぶしてくれたっぺよ♪」
 
ギョリイは、ナマズオマスクの中からふにゃっと笑った。
 
「まんばっぺがオラの隣にいてくれるだけで、オラのモロコシ様は二倍甘くなるっぺな!」
 
「……なんだその理論」
 
「愛っぺ!!」
 
「……」
 
「……ありがとだっぺな、まんばっぺ♪」
 
ギョリイの声に、まんばっぺはふっと息を吐き――
 
「……変なやつだな」
 
そう言って、ようやく微笑んだ。