薩摩の本丸。
自称ナマズオ族の審神者、ギョリイがモロコシ様トゥートゥバックを抱えて勝利の凱旋で帰城。
 
「うぺぇぇぇぇ!!大勝利だっぺぇぇぇ!!!」
 
抱きしめているバッグは、まるで黄金の戦利品。
そのまま嬉々として庭を駆け回っていくギョリイを、
山姥切国広は、ただ静かに見送っていた。
 
(……よかった。あいつが笑ってるなら、それで――)
 
そう、思おうとした。
でも。
 
「……浮かない顔をしているな、偽物くん」
 
後ろからかけられたのは、山姥切長義の声。
 
「……」
 
「トートバッグ、手に入ったのだろう?本来なら、主の笑顔を見て喜ぶところじゃないのか?」
 
黙ったままの山姥切国広に、さらにもう一振り現れる。
へし切長谷部だ。
腕を組みながら山姥切国広の顔をじっと見る。
 
「なのにお前は何だその顔は」
 
しばらくの沈黙のあと――
山姥切国広は、ぽつりと呟いた。
 
「……買えたんじゃない。……もらったんだ」
 
「……?」
「……?」
顔を見合わせる山姥切長義とへし切長谷部。
 
「ナマズオ大名が並んでて……偶然買えたからって、主にくれた」
 
「…………なるほど」
長義が、少し納得したように口元に手を当てる。
 
「だから……お前はあんな顔をしていたのか」
 
山姥切国広は顔を伏せる。
 
「……主が喜んでいるならそれでいい。わかっている。でもなんか……気に入らない」
 
そう言う山姥切国広に長谷部が小さく眉を寄せる。
 
「……気持ちはわかるが、くだらない感情で主の喜びを曇らせるなよ」
 
「……ああ」
山姥切国広は俯く。
そして遠くでバッグを掲げてポーズを決めるギョリイに目をやる。
 
「うぺーいっ!!うぺーい!!!モロコシ様トゥートゥバックだっぺぇぇぇ!!!!!」
 
「……あんなに喜ばれたら確かに複雑、かな」
長義が肩をすくめて笑った。
 
山姥切国広は返事をしなかった。
 
ただ――
 
主の笑顔が、少しだけ遠く感じた。