「いざっぺぇぇぇ!!!」
テンション最高潮のギョリイと、どこか付き添いの父のような顔をした山姥切国広が町に到着。
目指すは――モロコシ様ショップ!
しかし。
「……う、うぺ……」
「……これは……」
目の前に現れたのは、店の角を3つも折れた先まで続く超・長蛇の列。
「な、な、なんだっぺ!?!?こんなにもモロコシ様信者が……っ!」
「……限定品なんだ。皆考えることは同じなんだろ」
それでもギョリイは強く笑った。
「大丈夫っぺ!!この位置でも絶対買えるっぺぇぇ!!オラ、祈ってるっぺよモロコシ様ァァアアア!!」
そう言いながら、両手を空に向かって広げ「もろこっぺー!!」と唱え続ける自称ナマズオ族のギョリイ。
山姥切国広は、そんなギョリイを横目で見ていた。
(……強がってる)
わかる。
主の背中が、少しだけ震えていた。
(……もし買えなかったら――)
主のあの小さな手が、袋を持たず帰るのかと想像するだけで、胸がズキリと痛んだ。
「……無理だったら、俺がなんとかする」
「うぺっ!?ぺぺぺっ!?まんばっぺ今何か言ったっぺか!?今尊いこと言わなかったっぺか!?」
「……言ってない」
「うぺっ……!?!?」
そして、ついに――午前9時。
モロコシ様ショップ、販売開始の鐘が鳴った。
ざわっ……ざわざわっ……と、列が動き始める。
(……きたっぺ……!もうすぐっぺ!!あと7人っぺ!!あと6人っぺ!!あと5――)
そして――
「次の方〜……」
「……申し訳ありません!モロコシ様トゥートゥバックは、ただ今をもちまして完売となりました!!」
「……」
「…………うぺ」
ドサァァ………
ギョリイの体が、音を立てて崩れ落ちた。
その瞬間、全身のポーキースーツに走る、“悲しみの電流”。
ナマズオマスクからは「ぺ……ぺぇ……」と断末魔のような音が漏れていた。
横で山姥切国広は、まるで斬られたかのように肩を震わせた。
「……う、うそ、だろ……」
モロコシ様のトゥートゥバックは、ギョリイの目の前で――消えた。
(……間に合わなかった……)
そう呟こうとして、彼は言葉を飲み込んだ。
目の前で、地面に崩れた自称ナマズオ族の小さな背中が、ただ哀愁を漂わせ転がっている。