ある日から、妙な光景がこの本丸で日常と化した。
「ぬははぁ〜〜、ここの畳はよく寝れるっぺな〜〜」
「勝手に昼寝をするな」
「ちゃっかりお茶出されてるし、ナマズオスイーツも焼いてるっぺよ〜?」
「なぜ俺の本丸に“ナマズオ焼き”の匂いがするんだ……」
ナマズオマスクをかぶり、むちむちポーキースーツで堂々と畳を転がる――
そう、ギョリイである。
源清麿の譲渡劇を経てからというもの、なぜかギョリイはナマズオ大名の本丸に週3のペースで入り浸っていた。
まるで――
「ここがオラの別荘っぺな。ナマズオ大名本丸・南館っぺ〜〜」
「誰が許した」
正式名称:薩摩の南本丸(源清麿元在籍本丸)
通称:ナマズオ大名本丸(勝手命名)
本来ならば厳格な本丸だったはずなのに、今や庭ではナマズオ族ヨルダンスの練習が行われ、奥の茶室ではナマズオスイーツお茶会が定期開催されるようになっていた。
刀剣男士たちは最初こそ警戒していたが――
ギョリイがふかしたさつまおいもを手渡すたびに、少しずつ打ち解けていった。
「今日は“ナマズオ甘露煮まつり”っぺよ〜〜!大名も手伝うっぺな〜!」
「俺は大名ではない。やめろその呼び方を」
「へい大名、さつまいも入りまーす!!」
「……無視か」
冷静沈着な男審神者は、なぜかこの侵略に対して強く怒ることはなかった。
むしろ、いつしかこう思い始めていた――
(……また来たのか。いや、来なかったら……寂しいと思ってしまったのは、誰だ)
気付けば、玄関にはナマズオ専用スリッパが用意され、蔵の一角には“ギョリイ専用いも保管庫”が存在していた。
そしてその日も、ギョリイは言った。
「ぺぺぺぺ〜〜、大名本丸は今日も平和っぺな〜〜。なあ大名?」
「俺は大名じゃないって言ってるだろうが……」
そう言いながらも、彼の声に棘はなく。
そっと置かれたナマズオマグカップを手に取り、ふ、と笑みを漏らすのであった。