「……ナマズオ大名、ありがとだっぺぇぇぇ!!」
「だからその呼び名はやめろと言ってるだろう……」
ギョリイの声が遠ざかると同時に、源清麿が笑いながら頭を下げた。
「……本当に、ありがとうございました。僕、先生のところへ行ってきます」
「……ああ。行け。君が“自分で選んだ場所”なら、俺はもう何も言わん」
やや仏頂面のナマズオ大名(非公認)に見送られながら、ギョリイと源清麿は本丸を出た。
外には、じっと佇む一振りの男、山姥切国広。
「……うぺっ!!まんばっぺ!!」
「主……」
ギョリイの後ろに立つ源清麿を見て、山姥切国広の目が見開かれる。
源清麿はそっと一礼した。
「初めまして。源清麿です。……君の本丸で、水心子先生と再び過ごせること、光栄に思ってるよ」
「……そうか……連れてこれたんだな」
山姥切国広の肩から、ふっと力が抜ける。
ぎこちないながらも、その唇に微笑が浮かぶ。
「……行こう、主。あんたの帰る場所へ」
ギョリイはこくこく頷き、源清麿の手を取った――
「さあ!!帰るっぺよ!!オラたちの、薩摩の本丸にぃぃぃぃ!!!!!」
――そして、薩摩の本丸。
門が開くと同時に、ざわめきが広がった。
「……え?あれって……!?」
「えっ!?連れてきたの!?主が!?主が本当に!?」
「源清麿!?ほんとに来たーー!!」
清光、安定、長谷部、不動、薬研、みっちゃん、加羅ちゃん……見知った顔が次々と駆け寄ってくる。
「ただいまっぺぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ギョリイが短い腕を広げて叫ぶと、全員が一斉に抱きついてきた。
「ぎょえぇぇぇ!?多いっぺぇぇぇ!!!」
その渦の中心に、源清麿が静かに立っていた。
(……あったかい)
その空気、その温度、その言葉のひとつひとつが、彼の胸の奥に染みわたっていく。
そして――
一歩、また一歩と、廊下を渡り、庭へ出ると、そこに立っていたのは。
水心子正秀。
静かに、しかし確かに、彼は源清麿を見つめていた。
「……清麿」
「……先生」
誰も声を出さない。
空気すら息をひそめたように、二人の間に風が吹く。
そして――
「……遅くなりました。先生」
「……いや、来てくれて、ありがとう。おかえり、清麿」
その一言に、源清麿の瞳が潤む。
「ただいま、先生。僕、やっと……帰ってこれたよ」
次の瞬間、二人の距離は、そっと近づき――
静かに、しかし確かに、再会の抱擁が交わされた。
「……先生、ナマズオ太鼓って何?」
「……あとで説明する」
ギョリイは、みんなの輪の中で、こっそりとマスクの奥で涙を拭っていた。
「……オラの本丸、今日もいい日だっぺな……」