翌朝。

彼女は指定された場所に足を運んだ。

そこには、自分と同じように「審神者募集」を見てやって来たのだろうと思われる人たちが数人いた。けれど、彼らは皆、落胆した様子で引き返していく。

「なんにもないじゃん!」
「騙されたぁ〜!」
「時間の無駄だった……」

口々に不満を言いながら去っていく彼らを見て、彼女は眉をひそめた。

──何もない?

不思議に思う。
だって、彼女の目の前には、立派な和風屋敷があるのだから。

大きな門構えの屋敷。
歴史を感じさせる風情ある佇まい。
庭には手入れの行き届いた松の木が植えられ、砂利道が綺麗に整えられている。

──こんなにもはっきりと存在しているのに?

彼女は周囲を見渡した。
誰も、この屋敷を見ていないのだろうか。
それとも、彼女の目にだけ映っているのだろうか。

戸惑いながら屋敷の前に立つと、扉の前にいた人物が、静かに彼女を見つめた。

長い黒髪を後ろで束ねた男。
和服を着こなし、どこか格式を感じさせる雰囲気を纏っている。

そして、男は微笑みながらこう言った。

「あなたには見えるのですね。──合格です」

彼女の心臓が、ドクンと鳴った。

──これは、何かが始まる合図だ。