数日後。
——大倶利伽羅はまたしても庭に“何か”が転がっているのを目撃した。
今度は。
巨大なタコ。
「……」
言葉を失う。
いや、もう何も言う気が起きない。
サメ、いもむし、ちょうちょ、カブトムシ——ときて、なぜタコなのか。
流れがまるで読めない。
もはやギョリイの進化ルートが理解できない。
そして、そのタコのぬめぬめしたフォルムからは……。
「……タコはね……自由ぺ……」
——案の定、くぐもった声が聞こえた。
(やっぱりギョリイか……)
大倶利伽羅は、無言で天を仰ぐ。
そして、冷静に考えた。
このまま無視して通り過ぎるべきか。
だが、いままでの経験からして——。
(……まあ、どうせ脚を掴まれる)
そう確信していた。
だから。
大倶利伽羅はタコに近づき、先に脚を掴んだ。
「ぺぇええええええ!?!?!?」
タコ(ギョリイ)が驚愕の声を上げる。
「な、何するぺ!?!?」
「どうせ掴んでくるんだろ」
「ぺえええ……!?」
予想外の展開に動揺するギョリイ。
「……で、何をしてるんだ、今度は」
「タコぺ」
「見ればわかる」
「タコはね……自由な生き物ぺ……!!」
「……」
「縛られることなく、どこへでも行けるぺ!!!」
「そうか」
「タコはね……! どんな状況でも適応するぺ!!!」
「そうか」
「タコはね……!!!」
「うるさい」
大倶利伽羅はタコの足(布製)を掴み、そのまま逆さに持ち上げた。
「ぺえええええ!?!?!?!?」
タコ(ギョリイ)が、びたんびたんと暴れる。
「タコが……! タコが吊るされてるぺえええ!!」
「お前がタコだって言ったんだろ」
「ぺええええええ!!! タコは……! タコはこんな仕打ち受けたことないぺ!!!?」
「なら、おとなしくするか」
「……タコは……」
ギョリイは悔しそうに震えた。
そして——。
「タコは墨を吐くぺ!!!!!」
バッシャアアアアア!!!!!
タコスーツから黒い液体(おそらく墨に見せかけた水)が飛び散った。
「……」
大倶利伽羅の顔に、黒い水滴が滴り落ちる。
「……」
ゆっくりと、ギョリイを地面に降ろす。
そして、静かに言った。
「……」
「タコは……! 強者に立ち向かう生き物ぺ……!!」
「……そうか」
バッ!!!!!
次の瞬間。
タコ(ギョリイ)は、庭の池に放り込まれた。
「ぺぇええええええええ!!!!!!!!!」
バッシャアアアアア!!!!
水しぶきが上がる。
「……」
大倶利伽羅は黙って、その様子を見ていた。
池の中でバシャバシャ暴れるタコ(ギョリイ)。
その姿は、タコというより溺れかけたナマズオだった。
「ぺえええええええ……!!!」
そして、池の中からギョリイは叫んだ。
「タコはね……!!! 水が怖いぺ!!!!」
「お前、本当にタコか?」
「タコはね……! 泳げないぺ!!!!」
「もうタコやめろ」
結局、大倶利伽羅は池に飛び込んでギョリイを引き上げた。
またしても馴れ合ってしまったのである。