本丸の台所に立つギョリイは、意気揚々と野菜室を開けた。
「きゅうり〜、きゅうり〜♪」
今日も美味しいきゅうりに味噌をつけて、豪快にかぶりつく。暑い日にはこれが一番だ。冷蔵庫の奥から緑色の長細い野菜を取り出し、豪快に味噌をつける。
そして――
パクッ。
……
「ん?」
ギョリイのナマズオマスクの下で、舌が違和感を訴えた。
これ、きゅうりじゃない。
食感がきゅうりと違う。シャキッとしていない。妙に柔らかい。
「うぺ?」
口の中で転がしながら改めて見たそれは、たしかに緑色の細長い野菜。
だが、よく見ると表面がちょっとツルッとしていて、なんだかきゅうりとは違う雰囲気を醸し出している。
……ズッキーニやんけ!!
「貴様ァァァァ!!」
ギョリイの怒りが爆発した。
「オラのきゅうりに化けおってぇぇぇぇ!!!貴様ァァァ、ナマズオ族を騙すとはいい度胸だっぺぇぇぇ!!」
ブンブンとズッキーニを振り回し、今にも庭に投げ捨てそうな勢いだ。
そこに、たまたま台所に入ってきた燭台切光忠が、ギョリイの異常な気配に気づいた。
「どうしたんだい、主?」
「みっちゃん、きゅうりだと思って食べたら、こいつ……ズッキーニだったっぺ!!」
「ええっ、それは大変だねぇ!」
燭台切は笑いながらも、ギョリイの手元のズッキーニを見て納得した。確かに、ぱっと見ではきゅうりと間違えやすい。
「でもズッキーニも美味しいよ?炒めたり、グリルしたり、スープにしたり……」
「オラはきゅうりを食べたかったんだっぺぇぇぇ!!」
「まあまあ、落ち着いて。じゃあ代わりにちゃんときゅうりを出そうか?」
「……ほんとっぺか?」
「もちろんさ」
燭台切が冷蔵庫の奥から本物のきゅうりを取り出してくれると、ギョリイはそれを受け取り、再び味噌をつけて豪快にかぶりついた。
「シャキッ……うまっ!これだっぺ!!!」
嬉しそうにきゅうりを頬張るギョリイを見て、燭台切は優しく笑った。
「それじゃあ、そのズッキーニは僕が料理するから、晩ごはんを楽しみにしていてね」
「ズッキーニは……みっちゃんに任せるっぺ……」
こうして、ズッキーニの不意打ちに激怒したギョリイだったが、無事にきゅうりを食べることができ、機嫌を取り戻したのだった。
なお、その後の晩ごはんで出されたズッキーニのチーズ焼きは、「うめぇっぺ!!!」と叫ぶほど美味しく、ギョリイは結局ズッキーニも好きになったとかならないとか――。