――薩摩の本丸、早朝。
空がまだ薄暗い頃。
本丸は静寂に包まれ、刀剣男士たちも心地よい眠りについていた。
――その時。
「モロコシ様ぁぁぁああ!! 降臨だっぺぇぇぇ!!!」
突如として響き渡る絶叫。
「!!?」
「何事だ!?」
「敵襲か!?」
「主!?」
驚いた刀剣男士たちが慌てて飛び起き、武器を手にしながら声のする方向へ駆けつける。
――庭園のモロコシ様畑。
そこには、朝日を背にしながら奇妙な動きを繰り返すギョリイの姿があった。
「モロコシ様ぁぁ! 実れぇぇぇ!! オラの愛を受け取るっぺぇぇ!!」
むちむちあんよを大きく振り上げ、ヨルダンスに似たステップを刻みながら、ぎこちないが妙に気合の入った舞を踊っている。
その姿を見た刀剣男士たちは、一瞬沈黙した。
そして――
「……主、何やってんの?」
加州清光が目をこすりながら訊ねる。
「うぺ!? みんな、なんでここにいるっぺ!?」
「いや、お前の声が本丸中に響き渡ってんだよ……」
不動行光が呆れ顔でため息をつく。
「敵襲かと思いましたよ」
へし切長谷部が肩を落とす。
「敵じゃなくて、主が踊ってるだけだったな!」
鶴丸国永が笑いながら腕を組んだ。
「……で、何をしてた?」
山姥切国広が渋い顔で問い詰める。
「モロコシ様の成長を祈願する舞を踊っていたっぺ!」
ギョリイは堂々と胸を張った。
「オラ、エオルゼアでナマズオ族のヨルダンスを見て、ひらめいたっぺ! モロコシ様のために踊れば、きっと立派に育つっぺ!」
「……それで、早朝から大声で叫びながら踊ってたのかな?」
山姥切長義が冷静に言う。
「うぺっ!?」
「まあ、楽しそうで何よりだけどさ……主、それで本当に効果あるの?」
大和守安定が眠たそうにまばたきする。
「モロコシ様のご加護があれば、大丈夫だっぺ!!」
「……どう考えても、水や肥料の方が大事だろ」
大倶利伽羅が静かに言い放つ。
「そんなことないっぺ! モロコシ様は、オラの愛を受けてすくすく育つっぺよ!!」
ギョリイは再び舞い始めた。
「モロコシ様ぁぁ! モロコシ様ぁぁ!! たわわに実れぇぇぇ!!」
ぺしぺしぺしっ!
むちむちあんよが地面を叩く音が響く。
「……ねぇもう止めようよ〜」
加州清光がうんざりしたように言う。
「俺も同感だ」
山姥切国広が深くため息をつく。
「止めないと、また主が新しい“儀式”を考えかねない」
へし切長谷部も頭を抱える。
「でも、主が楽しそうなら……」
大和守安定が苦笑する。
「いや、寝不足になったら戦に支障をきたすからダメだって」
不動行光がバッサリ切り捨てた。
「よし、ここは俺が一肌脱ごう」
鶴丸国永がニヤリと笑い、ギョリイの前に立った。
「ん? どうしたっぺ?」
「主、祈りの舞なら、もっと本格的にやった方がいいんじゃないか?」
「うぺっ!? そうっぺか!!」
「よし、ならば俺も踊ろう!」
「うぺぇ!? 鶴丸もやるっぺか!?」
「おう! せっかくだからな!」
◆◇◆
こうして、ギョリイと鶴丸国永による 「モロコシ様を讃える舞」 は、朝日とともに庭園で繰り広げられたのだった――。
(そして、静かにそれを見守る他の刀剣男士たちは、心の中でこう思っていた。)
「もう寝かせてくれ……!!!」