――薩摩の本丸、庭園・モロコシ様畑。
ギョリイは、じっと畑を見つめていた。
「……うぺ?」
モロコシ様の芽が、どこにも見当たらない。
「おっかしいっぺな……昨日オラ、ちゃんと種を植えたっぺよ?」
ギョリイはナマズオマスクの下で目を細め、土の中を掘り返してみる。
「……あれ? ないっぺ?」
あわてて別の場所も掘る。
「うぺぇ!? モロコシ様が消えたっぺぇぇぇ!!」
◆◇◆
ギョリイの絶叫を聞きつけ、すぐに刀剣男士たちが駆けつけてきた。
「何があった?」
山姥切国広が腕を組んで訊ねる。
「オラのモロコシ様がいないっぺぇぇ!!」
「いない?」
へし切長谷部がギョリイの指差す畑を見やる。
「……芽が出るには時間がかかるんじゃない?」
不動行光があきれたように言う。
「そもそも昨日植えたばっかじゃん。そんなすぐには生えてこないでしょ?」
大和守安定も苦笑する。
「うぺっ!? そういうもんだっぺか!?」
「主、ほんとに畑仕事の経験ある?」
加州清光がジト目で睨む。
「う、うぺぺ……」
「まあまあ、せっかく植えたなら、きちんと育てないとな!」
鶴丸国永が楽しげに笑う。
「……お前、水はちゃんとやったのか?」
大倶利伽羅が呆れ顔で尋ねる。
「水……?」
ギョリイは硬直した。
「……やってないっぺぇぇ!!!」
◆◇◆
――しばらく後、モロコシ様畑の前。
ギョリイはじっと畑を見つめている。
「……オラ、ちゃんと水やりするっぺ!!」
「うん、昨日の時点でそれに気づいてればよかったのにね」
加州清光がため息をつく。
「今からでも遅くはない。しっかり世話をしようか」
山姥切長義が厳しい口調で言う。
「オラ、モロコシ様のために頑張るっぺ!!」
ギョリイは意気揚々とじょうろを手に取った。
……が。
「うぺ?」
なぜか水が出てこない。
「……なしてっぺ?」
ギョリイはじょうろを振る。
「水が入ってないんじゃないか?」
不動行光が冷静にツッコむ。
「……うぺぇ!? 水を入れるのを忘れてたっぺぇぇ!!」
「そもそも、じょうろの使い方も怪しいな」
へし切長谷部が頭を抱えた。
「……主、不器用すぎない?」
大和守安定が心配そうにギョリイを見つめる。
「仕方ないな、俺が手本を見せる」
山姥切国広がバケツを持って水を汲みに行った。
「俺も手伝ってあげるよ」
加州清光がじょうろを取り、さらさらと水を流し始める。
「……やれやれ、結局手を貸すことになろうとは」
へし切長谷部も苦笑しながら鍬を手に取り、土をならし始める。
「まあ、こうなると思ってたけどな」
不動行光も水を撒き、
「楽しくなってきたな!」
鶴丸国永も加勢する。
「……好きにしろ」
大倶利伽羅は文句を言いつつ、いつの間にか畑を見守る役になっていた。
「みんな……!」
ギョリイは感動した。
「オラ、一人じゃ何もできないかもしれないけど……! でも、みんなと一緒なら、モロコシ様もきっと立派に育つっぺ!!」
「おい、それはつまり“俺たちが世話する”ってことか?」
山姥切国広が眉をひそめる。
「うぺっ!?」
「……はあ、もういいよ。どうせ主が世話するとは思ってなかったし」
加州清光が諦めたように笑う。
「まあ、面倒は見てあげるよ」
大和守安定も肩をすくめた。
「ったく……困った主だ…」
へし切長谷部も呆れながら、それでも世話をする気は満々だ。
「うぺぇぇ!! みんなありがとうだっぺぇぇ!!」
こうして、ギョリイのモロコシ様畑は、なんやかんやで刀剣男士たちの手によって守られることになったのだった――。