ある日の薩摩の本丸。
穏やかな昼下がり、庭でくつろぐ刀剣男士たちの視線の先で、大和守安定が何やら険しい顔をしていた。
「主!どういうこと!?これ!」
安定が手に持っているのは、どう見てもギョリイが書いたと思われる紙。そこには――
『大和守安定、カツオの舞フェスティバル開催!』
と、派手な文字で書かれていた。
「うぺ? それは、安定のためにオラが企画したサプライズイベントっぺ!」
「いや、待って待って!僕、カツオの舞フェスティバルとか聞いてないから!?」
「でも、安定はカツオが好きだっぺ?」
「いや、まぁ……カツオは好きだけど!?」
「だから、みんなで安定のためにカツオを大量に用意して、カツオの舞を踊るっぺ!!」
「カツオの舞!?何それ!?僕そんなの知らない!」
「大丈夫っぺ! オラが考えたっぺから!」
「そこが一番不安だよ!!」
安定が不安定になる中、庭ではすでに準備が進んでいた。燭台切光忠が巨大なカツオのぬいぐるみを抱え、鶴丸国永が興味津々でカツオの絵を描いた大漁旗を振っている。薬研藤四郎は「大将、ちゃんと踊れるのか?」とニヤニヤしていた。
「や、やめて!主、僕カツオは食べるのが好きなだけで、舞うのはちょっと!!」
「だいじょうぶっぺ! カツオの気持ちになれば、自然と踊れるっぺ!」
「そんな境地に達したくない!!」
だが、ギョリイはもうやる気満々だった。
「じゃあ、オラがまず踊るっぺな!! みんな、見てるっぺよ!!」
そう言うと、ギョリイはむちむちあんよで軽快にステップを踏みながら、奇妙な動きでヨルダンスを踊り始めた。
「な、なんだこの動き……!?カツオ関係なくない!?」
「これがカツオの舞っぺ!さぁ、安定もやるっぺ!!」
「ムリムリムリムリ!!!」
安定が必死に後ずさるが、すでに周囲は祭りムードになっていた。鶴丸が笑いながら「いや~、面白いことになってきたな!」と煽り、燭台切光忠が「せっかくだから踊ってみたら?案外楽しいかもしれないよ?」と優しく追い打ちをかける。
「やめてよ!なんでみんなノリノリなの!?」
「安定が踊らないなら、代わりに清光に踊ってもらうっぺ!」
「えっ!?ちょっと!?なんで俺!?」
「だって、オラにお願いされたら断れないはずぺ!」
「……いや、それはまぁ、確かに……でも!」
清光が戸惑っているうちに、ギョリイが「それっぺ!」と合図を出し、音楽がスタート。
――ついに、薩摩の本丸でカツオの舞フェスティバルが開幕したのだった。
~数時間後~
「……はぁ、はぁ……なんで僕がこんなに踊らなきゃいけないのさ……」
庭には、汗だくの安定と清光。二人ともギョリイのカツオの舞に巻き込まれ、完全に踊りきった後だった。
「いやぁ、楽しかったっぺな!」
「主は楽しかっただろうけどさ!!」
「でも、安定も最後の方はノリノリだったっぺよ?」
「……うっ、それは……まぁ……」
安定は悔しそうに口をつぐむ。途中から踊るのが楽しくなってしまったのは、認めざるを得なかった。
「来年もやるっぺな!」
「いやだよ!!」
こうして、薩摩の本丸に新たな謎の祭りが生まれたのだった。