「ねぇ、主。何やってんの?」

本丸の廊下を歩いていた加州清光は、何やら怪しげな動きをするナマズオマスクの主を発見した。
主ことギョリイは、むちむちしたポーキースーツ姿でしゃがみ込み、廊下の隅にある小さな影と向き合っている。

「しぃぃぃっ……静かにするっぺよ、清光……!!」

ナマズオマスクの奥から、ひそひそとした声が聞こえる。
清光は思わず眉をひそめた。なんだ、この妙に緊迫した雰囲気は。

「いやいや、なんかよく分かんないんだけど……何してんの?」

清光がもう一度聞くと、ギョリイは小さな手をゆっくりと差し出し、廊下の隅を指さした。
清光が目を凝らしてみると……そこには、一匹のカナブンがいた。

「……カナブン?」

「そうっぺ!! こやつ、今オラと目が合ったっぺな!! これは決闘っぺ!!」

「は!? 何言ってんの!?」

清光が呆れたように言うが、ギョリイは大真面目な様子で、手のひらをぐっと握りしめる。

「オラはエオルゼアで鍛えられたナマズオ族の審神者っぺ! これしきの試練、乗り越えてみせるっぺ!!」

「試練!? いやいや、ただのカナブンでしょ!?」

清光が思わず突っ込むが、ギョリイはじりじりとカナブンに近づいていく。
そして、そっと手を伸ばし――

「うぺっ!!?」

突然、カナブンが飛び上がり、ギョリイの顔面目掛けて突撃してきた。

「うぺぇぇぇえええええっっっ!!!?」

「主!? うわっ、ちょっ……!!」

バタバタと後ろにのけぞるギョリイ。驚きのあまり、ナマズオマスクがずれそうになり、慌てて押さえる。

「や、やめるっぺ!! オラの顔面に直撃しようとするなっぺ!! これは決闘じゃなくて襲撃っぺぇぇぇ!!!」

「だから言ったじゃん!!」

清光は爆笑しながらも、ギョリイの背中をぽんぽんと叩く。
その間にカナブンはどこかへ飛んでいったらしい。

「くっ……オラの負けっぺ……」

ギョリイは膝をつき、震える手でナマズオマスクを押さえながら敗北宣言をする。

「いや、主さぁ……カナブン相手にそんな大袈裟な……っぷっ……!!」

笑いをこらえきれず、清光は肩を震わせた。

「くぅぅ……エオルゼアにはこんな奇襲をかけるカナブンはいなかったっぺ……!!」

「そりゃそうでしょ……」

清光は呆れながらも、涙を拭いながらギョリイを立ち上がらせた。

「カナブンなんかに負けるナマズオ族の審神者って、どうなの?」

「うぅ……清光、オラを慰めるっぺ……」

「よしよし、頑張ったね~」

適当に頭を撫でてやると、ギョリイはむちむちあんよをじたばたさせながら納得したようだ。

こうして、ナマズオ族の審神者 vs カナブンの戦いは、ギョリイの完敗という形で幕を閉じたのだった。