「……あんた、また変なもの持ち込んだだろ。」
庭先でさつまおいもの収穫をしていた山姥切国広が、眉間に皺を寄せながら審神者――ギョリイを睨んでいた。
その視線の先には、両手で大事そうに抱えられた黄金色のとうもろこし。
「違うっぺ!これはモロコシ様だっぺ!」
「……は?」
「モロコシ様だっぺな!!」
ギョリイはドヤ顔でとうもろこし――モロコシ様を掲げ、くるっと一回転する。
「エオルゼアで出会ったモロコシ様は、とうもろこしの精霊っぺ!この姿をしているけど、実はものすごいパワーを秘めてるっぺな!」
「……とうもろこしに?」
「モロコシ様っぺ!!!」
山姥切は深いため息をついた。
「何でもかんでも変な名前をつけるな……それをどうするつもりだ。」
「モロコシ様のありがたいご加護を本丸に分け与えるっぺ!」
ギョリイは意気揚々とモロコシ様を掲げた。
「さつまおいもと共に大事に育てて、本丸の皆に配るっぺな!さつまおいもとモロコシ様で、むちむちぼでーを目指すっぺ!!」
「……余計なことはするな。」
山姥切は渋い顔をした。
どうせまた本丸のどこかで奇妙な儀式を始めるに違いない。
しかし、ギョリイの「しめしめeye」が光るのを見逃さなかった。
「うぺぺ……これをお供えしてお祈りすれば、まんばっぺもモロコシ様のご加護を受けられるっぺな?」
「いらない。」
「そう言うと思ったっぺ……でも、大丈夫!モロコシ様のご加護は拒否できないっぺ!」
「……は?」
ギョリイはニヤリと笑うと、モロコシ様を山姥切の足元にそっと置いた。
「うぺぺぺぺ……さぁ、まんばっぺよ……これを受け取るがいいっぺな……」
「いや、だからいらない。」
「もう足元にある時点で、ご加護は受け取ったっぺ!」
「そんなルール聞いてない!」
ギョリイは満面の笑みで頷いた。
「モロコシ様のご加護を受けた者は、一日中とうもろこしのことを考えてしまう呪いがかかるっぺ!」
「ふざけるな!!」
「遅いっぺ!もう足元に置かれた時点で、まんばっぺの脳内はとうもろこしに支配されているっぺ!!」
「そんなバカな話があるか!!」
山姥切はモロコシ様をつまみ上げ、ぎゅっと握った――その瞬間だった。
「…………とうもろこし、食べたい……」
「うぺっ!?まんばっぺ!?!?」
「…………いや、待て……違う……そんなはずは……!」
山姥切は頭を抱えた。
意識すまいとしても、なぜかとうもろこしのイメージが消えない。
焼きとうもろこし、蒸したとうもろこし、バターコーン……甘い香ばしい匂いが鼻腔に広がる気がする……。
「うぺぺぺぺぺ!モロコシ様のご加護の効果は絶大っぺな!!」
「くそっ……!なんてことを……!」
山姥切が苦悶の表情を浮かべる中、ギョリイはあゆみよりステップを踏みながら嬉しそうに踊っていた。
「とうもろこし〜♪ とうもろこし〜♪ モロコシ様に感謝っぺ〜♪」
「やめろォォォ!!!」
こうして、山姥切国広はその日一日中とうもろこしの呪い(?)に苦しめられることとなった。
そして、夕飯時――。
「焼きとうもろこし、あるっぺよ?」
「………………食べる。」
モロコシ様のご加護は偉大である。