本丸・医務室
ギョリイが気絶したまま横たわる静寂の空間に、突然――
「ドドドドドドド!!!!」
激しい足音が響き渡る!!
「主ーーーッ!!!」
「……おっと、来たな」
鶴丸は眉を上げ、扉の向こうから迫る気配に気付いた。
この激しい足音、この鬼気迫る声……間違いない。
「長谷部か……!」
ヤバい。
完全にパニックになっている。
まだギョリイは目を覚ましていないが、もしこのまま長谷部が入ってきて、「主のマスクがない!!」 と気付いたら、どんな大惨事が起こるか分からない。
「いやいや、これはまずいな……」
鶴丸はすかさず、ギョリイのナマズオマスクを手に取り、そっと頭にかぶせた。
バンッ!!!
その瞬間、医務室の扉が乱暴に開かれる。
そこに立っていたのは――完全に血相を変えたへし切長谷部。
「主は無事か!!!」
「おう、いるぞ」
鶴丸は何食わぬ顔で、すやすやと眠る(というか気絶したままの)ギョリイを指差した。
「……っ!!!」
長谷部は、その場に膝をつくようにギョリイの横へと駆け寄った。
「主……!」
ナマズオマスクは、ちゃんとかぶっている。ただ、動かない。
長谷部はギョリイの手を取り、震える声で言った。
「……申し訳ありません……! 俺が、俺がちゃんと側についていれば、こんなことには……!」
明らかに取り乱している。
「いやいや、加羅坊が報告に来る前に運んできたんだから、気にするなって」
「鶴丸……!! では、主の状態は……!?」
「まぁ、しばらくすれば目を覚ますだろう。あんまり騒ぐと、余計に疲れちまうぜ?」
長谷部は眉を寄せながら、ギョリイの頬をじっと見つめる。
「……本当に、無事なのか?」
「おう、ナマズオ族は頑丈だって言うだろ?」
「それは……そうだが……」
長谷部の表情はまだ晴れない。
それもそのはず――彼にとってギョリイは命よりも大切な主なのだから。
「主……目を覚ましてください……!!」
そう言って、長谷部はギョリイの手をぎゅっと握る。
鶴丸はその様子を眺めながら、
自分がギョリイの正体を見たことなどまるでなかったかのように、しらを切り続けた。