ある日の薩摩の本丸。

大広間では、刀剣男士たちが次の遠征の準備を進めていた。
そんな中、ギョリイはというと、ポーキースーツ姿でちょこんと正座し、ナマズオマスクをかぶったまま、何やら真剣な眼差しをしていた。

「……むぅぅぅ……」

険しい表情(たぶん)で腕を組むギョリイ。
いつもなら「主、何してるんだ?」と声をかける薬研や清光も、今日は少し様子がおかしいことに気づいていた。

――ギョリイが「しめしめeye」を発動していたのだ。

「……なんか主、企んでるよな?」
「おそらくな。だが、ここで深追いするのは危険だ……」

薬研と清光はそっと距離を取る。
しかし、不運にもそこへ通りかかったのが、大倶利伽羅だった。

「……何してる」

大倶利伽羅がそう尋ねると、ギョリイはビシッとポーキーの手を突き出し、堂々と宣言した。

「オラ、ナマズオ族の威厳を示すっぺ!」

「……は?」

なんのことかわからない大倶利伽羅の前で、ギョリイはむちむちあんよを使い、ゆっくりと「あゆみよりステップ」 を始めた。
完全に不審者ムーブである。

「……主、何をしている」
「オラ、ナマズオ族の威厳を見せつけてるんだっぺ!!」

「……意味がわからん」

大倶利伽羅は眉をひそめるが、ギョリイは「しめしめeye」をキラリと輝かせ、さらにステップを加速させる。
むちむちあんよがリズムよく動き、ポーキースーツのフォルムが小刻みに揺れた。

「ナマズオ族の真髄! 見るがいいっぺな!」

「いや、知らん」

大倶利伽羅はバッサリ切り捨てた。
しかし、その時!

「何をしているんだ、主!!」

遠くから駆けつけたのは、へし切長谷部だった。
彼の目には、大倶利伽羅に対して謎の踊りを披露する主の姿 が映っていた。

「主! 何をしているんですか!? 危険では!? もし転んで怪我をしたらどうするんですか!!」

「む!? 長谷部、これはナマズオ族の威厳の舞――」

「踊っている場合ではありません! こちらへ!」

ギョリイはあっさりと長谷部に捕獲された。

「まったく……主は気を抜くとすぐに妙なことを……」

「ちょ、長谷部! ナマズオ族の威厳がまだ――」

「そんなものはいいんです!!」

あえなく撤収させられるギョリイ。
それを見送る大倶利伽羅は、腕を組みながら静かに呟いた。

「……やはり、意味がわからん」

結局、この日もナマズオ族の威厳は示されることなく終わったのだった。