「……オラだけ、行けるっぺな。」

しん……と静まり返る本丸の庭で、ギョリイはポツリと呟いた。

どれだけナマズオ魂を高めても、どれだけ信じても、刀剣男士たちがエオルゼアに行く道は開かなかった。
しかし――

ギョリイだけは、いつでも行き来ができる。

それは、以前エオルゼアに行ったときも同じだった。

気がついたら異世界にいて、気がついたらナマズオ族になっていた。
そして――ナマズオ族として生きるのが楽しくて、気づけば5年も薩摩の本丸に戻らなかった。

……そう、5年も。

「だからこそ、ひとりで行かせるのは絶対ダメだ!」

山姥切がバン! と机を叩く。

「あるじ、あんたは前も何も言わずに5年もいなくなったんだぞ!? 今回もそうなったらどうするつもりだ!!?」

「うっ……」

ギョリイが目を泳がせる。

「でも、オラ、ギョボクさんに会いたいっぺよ……」

「だったら、こっちに呼べ!!!」

「それができたら苦労しないっぺぇぇぇ!!!」

「あんたならできるかもしれないだろうが!!!」

「いや、できないっぺよ!!」

「本当にか!? もう一度試してみろ!!」

「うぐぐ……」

ギョリイは悔しそうに地面をゴロゴロ転がる。

「なんでだっぺ……オラ、なんで一人でしか行けないっぺ……」

「審神者だから、だろうな。」

長義が腕を組んで考え込む。

「エオルゼアへと繋がる道が、お前だけに開かれるということは、おそらく“審神者”としての力が関係している。」

「むぅ……」

「でもな、主」

長谷部が少し険しい顔をする。

「一度、お前は本丸に戻らずに5年も行方不明になった。俺たちがどれだけ心配したか、わかっているか?」

「うっ……」

ギョリイは気まずそうに目を伏せる。

「清光なんか、最初の1年は毎日“帰ってこい”って文句を言ってたんだぞ。」

「ちょっと! そんな言い方やめてよ!!」

「いや、事実だろう。」

清光がプイッとそっぽを向く。

「……でも、まぁ、5年帰ってこなかったことにはムカついたし、心配もしたけどさ……今さら責めるつもりはないよ。」

「清光……」

「だからこそ、一人で行くのはダメって言ってんの」

「むぅ……」

ギョリイは頬を膨らませながら考え込んだ。

「でも、オラ、一人で行くしかないっぺよ……?」

「なら、せめて何か“戻ってくるための約束”をしろ。」

長義が冷静に言う。

「前みたいに“気がついたら5年経ってた”なんて事態は許されない。せめて定期的にこっちに戻ってくると約束しろ」

「む……むぅ……」

「本丸に残る刀剣男士のためにもな」

「……」

しばらく沈黙したあと――

「……わかったっぺ!!」

ギョリイはガバッと立ち上がった。

「オラ、絶対1ヶ月以内に戻るっぺ!! もし帰らなかったら、みんなでオラをぶっ叩いてでも連れ戻すっぺよ!!」

「連れ戻される前に自分から帰って来い」

山姥切国広が即答した。

「1ヶ月なんて言わずに、せめて数日で戻ってこい」

「むぅぅぅ……それじゃ、1週間っぺ!!」

「3日」

「5日!!!」

「……仕方ないな。5日ならギリギリ許容範囲か」

「やったっぺ!!!」

こうして、ギョリイの「エオルゼアひとり旅」は、5日以内に帰るという条件付きで許可されることになった。

果たして、ちゃんと戻ってくるのか――!?