「よし、作戦開始だ」

長義が腕を組み、真剣な表情で言った。

「ギョリイをもう一度ナマズオ族にするには、まず“ナマズオの記憶”を思い出させるのが最優先だ」

「でも、どうやって?」

山姥切が険しい顔で尋ねる。
それに対し、長義は冷静に指を折った。

「① ナマズオマスクをつけることを習慣づける。
② ナマズオ語を思い出させる。
③ ナマズオとしての生活を体に叩き込む」

「……本当にそんなので戻るのか?」

「やるしかないだろう?」

長谷部が渋い顔をしながらも同意する。

「とりあえず、ギョリイにナマズオマスクをつけさせるところからだな」

「でも、本人が嫌がってるんだろ?」

「だからこそ、“ナマズオ族であることが当たり前”と思わせるんだ」

長義の目が鋭く光る。

「ギョリイには、もう一度ナマズオ族として生きてもらう」

「ねぇ、だからさ、なんで私、この変な仮面つけなきゃいけないの?」

ギョリイは不満そうにナマズオマスクを見つめていた。

「いいからつけろ!!」

「えぇぇぇ……」

山姥切が強引にナマズオマスクをギョリイの顔に押し付ける。

「だいたい、私、こんな変な喋り方してたの!? だっぺ? って何??」

「お前はナマズオ族だからな!!」

「は!? そんなわけなくない!??」

「お前はナマズオ族なんだよ!!」

「いやいやいや、無理あるでしょ!! 鏡見たら普通に人間の女の子じゃん!!」

「違う!! お前はナマズオ族だ!!」

「いや、そんな洗脳みたいなこと言われても困るんだけど!?」

全く通じない。

「どうする!? このままじゃ、ギョリイが人間だってことがバレちまう!!」

「仕方ない……強行手段だ」

長義がすっと手を挙げた。

「ギョリイ、お前、エオルゼアで何をしていた?」

「え? エオルゼア?」

「そうだ、お前はエオルゼアでナマズオ族として生きていたはずだ」

「いや、そんな覚えないけど……?」

「ギョボクさんを忘れたのか?」

「……ギョボクさん?」

ギョリイの表情が一瞬揺れた。

「思い出せ、ギョボクさんの言葉を……!」

「ギョボクさん……ぺよい……?」

「そうだ!! ギョボクさんの語尾は『ぺよい』!! お前も言ってみろ!!」

「ぺ、ぺよい?」

「もっと心を込めて!!」

「ぺよい……!!」

バチィッ!!!

突然、ギョリイの中で何かが弾けたような感覚が走った。

「オラ……」

「……!!」

山姥切、長義、長谷部が息を飲む。

「オラ……ナマズオ族……??」

――洗脳、成功の兆し!!!

「よし、その調子だ!! もう一度言ってみろ!!」

「オラ……ナマズオ族、だっぺ……!?」

――ナマズオ語、復活の兆し!!!

「いいぞ!! 思い出せ!!」

「オラ……ナマズオ族っぺぇぇぇ!!!」

――ナマズオ完全復活!!!

「よし!!!!」

山姥切がガッツポーズをする。

「ナマズオマスク、つけるっぺ!!」

「つけるっぺぇぇぇ!!!」

ギョリイは勢いよくナマズオマスクを装着した。

「ふぅ……」

長谷部がようやく肩の力を抜いた。

「なんとか、元通りになったか……?」

「完璧とは言えないが、少なくともナマズオとしてのアイデンティティは取り戻したようだな」

長義が腕を組んで頷く。

「危なかった……。あと一歩遅れていたら、完全に人間の女の子として生きていくところだった……!!」

「もう二度とマスクを外すなよ!!」

「外さないっぺ!!」

ギョリイは堂々と宣言した。

――こうして、ギョリイは再びナマズオ族として生きることになった。

だが、すでにギョリイの素顔を目撃してしまった者がいる。

大和守安定である。

「……あれ、やっぱり今の状況、おかしくない?」

安定は、一人首をかしげていた――。